プラモデル感覚で自ら建てられる「住宅キット」 VUILDの“建築の民主化”で大工不足に新たな一手デジタルファブリケーション(1/2 ページ)

VUILDは、人手不足や建設費高騰に対応する新たな一手として、デジファブ家づくりサービス「NESTING」で施主自らが建てられる住宅キットの提供を開始した。香川県直島町の一棟目となる建設工事では、施主の家族が施工に携わり、約2カ月で木造住宅が完成したという。

» 2024年07月03日 12時00分 公開
[BUILT]

 3Dプリンタや木材加工機械によるデジタルファブリケーションの家づくりを目指す「VUILD(ビルド)」は、デジタル家づくりサービス「NESTING(ネスティング)」で、施主が主体となって設計から施工までを行う「住宅キット」をリリースした。着工からわずか2カ月で竣工した約75平方メートルの戸建て一棟目を皮切りに、建設業界が抱える人材不足や建設費高騰などの課題を解決すべく、新しい家づくりの在り方を提唱する。

デジファブで「家は自分たちでつくるもの」へ

 NESTING「住宅キット」とは、デジタルファブリケーション技術を用いた施主が主体となる家づくりの在り方。これまで当たり前だった「家は買う(もしくは借りる)もの」との考え方から、「家は自分たちでつくるもの」に変化させ、建設業界が抱える人材不足や建設費高騰の課題解決に取り組み、VUILDのビジョン『「いきる」と「つくる」がめぐる社会へ』の実現を目指していく。

香川県直島町で竣工した1棟目 香川県直島町で竣工した1棟目 Photo by Tomoyuki Kusunose 出典:VUILDプレスリリース

 深刻な人材不足と建設費高騰という課題に直面している建設業界。大工就業者は年々高齢化を迎え、20年間で半減し、30万人を切り、2040年にはさらに半減し、15万人を切るともいわれている。人材不足による人件費高騰と、近年の資材価格の上昇が相まって、建設費は右肩上がりの状況が続く。

 VUILDは、「このままだと富裕層しか家を建てられない、むしろお金を払っても建てられなくなる未来が来るかもしれない」と問題提起し、解消のためにデジタルファブリケーション技術を活用し、大工でなくても家づくりに参加できる住宅のキット化を始めた。

 キットは、木材のデジタル加工機「ShopBot(ショップボット)」を用いて加工する。デジタル加工のため、精度高く製造可能で、複雑な接合部やビス打ちの下穴には組立順序を示す番号を付けられる。

識別番号とビス穴のガイドが付いた部材 識別番号とビス穴のガイドが付いた部材 出典:VUILDプレスリリース

 設計の段階で、あらかじめ各部材を人が持てるサイズに分解しているため、施工時にクレーンなどの建機を必要としない。現場では、番号とビス穴を確認しながら部材を組み立てるだけなので、未経験者でも施工可能だ。また、住宅キットといっても、完全に規格化されているわけではなく、建物の基本形状のみで、広さや間取り、内外装の素材などは、NESTINGアプリを使って施主自身がカスタマイズできる。

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