13億円を投じる建設向け“音”の開発拠点「音ラボ」、大建工業の岡山工場で着工プロジェクト

大建工業は、岡山工場の敷地内で新たな音響技術の開発設計拠点「音環境ラボラトリー(音ラボ)」の建設工事に着工した。総投資額は13億円で2025年10月の完成を見込み、新施設ではCLTを構造躯体に用いた木造実験室を設置し、住宅/非住宅向けに高性能の建築音響製品や音に関する新技術、新素材などを開発していく。

» 2024年08月27日 08時00分 公開
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 大建工業は、岡山県岡山市南区海岸通で計画する「新・音響実験棟(仮称)」の正式名称を「音環境ラボラトリー(愛称:音ラボ)」に決定し、2024年8月20日に起工式を執り行い着工したと発表した。当初10億円程度を想定していた音ラボの総投資額は、建屋工事や新規の実験設備などを含め約13億円となる見込み。

大建工業初の構造躯体にCLTを用いた「木造実験室」を設置

「音ラボ」外観イメージ 「音ラボ」外観イメージ 出典:大建工業プレスリリース

 2025年10月に竣工を予定している「音ラボ」では、測定・分析技術の向上に取り組み、高性能の建築音響製品や音に関する新技術(音響メタマテリアル)、新素材の開発に向けた研究を進める。メタマテリアルとは、自然界に存在する物質にはない特性を持つ人工物質の総称で、特に音波や超音波を制御することで新しい音響特性を持たせる技術のことを音響メタマテリアルと呼ぶ。

 日本国内でも研究や実用化が進展し、自然界にはない音響特性を持った物質を生成する音響メタマテリアル技術の革新により、音響関連業界のさらなる市場拡大が期待されている。

 音ラボの所在地は岡山県岡山市南区海岸通2丁目5番8号の岡山工場敷地内で、建物構造と規模は鉄骨造2階建て延べ床面積977平方メートル。設計・施工はナイカイアーキットと日本音響エンジニアリング。

 施設内には、建築材料や構造の基本的な音響性能を測定する「残響室」「無響室」「箱型実験室」に加え、大建工業初となるCLTを構造躯体に用いた「木造実験室」を備える。各実験室には最先端の実験や測定装置の設置を予定しており、音に関わるさまざまな機能や性能の実験と評価が可能となる。

「音ラボ」のロゴマーク 「音ラボ」のロゴマーク 出典:大建工業プレスリリース

 2025年10月の稼働後は、施設内の設備をフル活用し、より高性能な「建築音響製品の開発」や「音環境の可視化」、あらゆる建築物に対応した音響設計を可能とする「シミュレーション技術の向上」など、さらなる音の技術開発を進め、住宅/非住宅問わず、顧客が求める幅広い要望に応えていく。

 各部屋の機能としては、木材実験室は、CLT造の公共施設、商業建築物、大規模木造住宅を対象とした遮音技術の開発など、木構造空間での音に関する多様な研究開発に活用する。

 天井や壁、床の全面に特殊な吸音材を施工した音が響かない無響室は、音の反射がほとんど無いため、騒音源の特定分析や音の拡散の測定などが可能になる。そのため、新たな遮音材の開発、建築物の音響設計に役立つ他、音がもたらす心理現象の実験の場としても活用が想定される。

2024年8月20日の起工式で「鍬入れの儀」を執り行う大建工業 社長 億田正則氏 2024年8月20日の起工式で「鍬入れの儀」を執り行う大建工業 社長 億田正則氏 出典:大建工業プレスリリース

 全面コンクリート打放しの、音が良く響く空間の残響室は、大きさの異なる2つの残響室で構成し、2つの部屋の間に防音ドアなどを施工して、遮音性能を測定するなど、JIS/ISOに準拠した実験が行える。各種素材や仕上げ材などの有無で生じる音の響きの違いを計測し、材料の吸音性能を確認するなど、多様な音響測定が行える。

 住宅の上下階を再現した箱型実験室は、マンションや戸建の上下階を想定した床衝撃音などを検証。箱型実験室は2室あり、一方は、RC構造での床衝撃音などを確かめられ、もう一方は、上階の床を必要に応じてさまざまな床構造に変更可能なため、各種建造物を想定した幅広い実験に応じられる。

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