労働力不足が叫ばれる建設業界では、作業効率化に向けた取り組みが進んでいるが、その中でも人に代わって現場作業を行う、いわゆる“建設ロボット”は効果が発揮されやすい。建設作業では、作業の姿勢や強度で人にとっては過酷なものが多い。それをロボットが代替すれば、その分の人手が他の作業や工程にまわせることになる。
建ロボテックは、「第8回 JAPAN BUILD TOKYO−建築の先端技術展−」(会期:2023年12月13〜15日、東京ビッグサイト)で、「鉄筋結束ロボット“トモロボ”の変化/進化から考える、建設現場作業ロボットの実装プロセス」と題して講演した。
建設現場でも昨今は、注目が集まる建設ロボットだが、導入プロセスが公開されることは稀(まれ)だ。建設業界には独自の商習慣やルールがあり、「閉鎖的」と話す関係者も少なくない。そのためか、現場を知らない企業が開発したロボットでは実装に至らないことが多いのだ。
講演では、鉄筋職人の子息として生まれ、自身も鉄筋職人として働いていた経歴を持つ建ロボテック 代表取締役社長 兼 CEO 眞部達也氏が、鉄筋結束ロボット「トモロボ」の誕生から進化と社会実装までのプロセスについて解説した。
工事現場で鉄筋の結束は、避けては通れない重要な工程だ。シンプルな作業の繰り返しだが、腰を屈めた体勢で長時間の労働が求められる。そのため、作業者に与える身体的な負荷は高い。
建ロボテックが開発したトモロボは、結束作業を自動で行うロボットだ。トモロボは、1箇所あたり2秒以下で鉄筋を結束する。移動用レールの敷設は不要で、作業ユニットが伸び縮みし、100〜300ミリ内で25ミリごとの配筋ピッチや鉄筋ズレにも自動で対応する。また、鉄筋面で、ロボットの横方向/進行方向とも1メートルあたり50ミリ以内の傾斜があっても自律移動する。
眞部氏は、「建設現場のような異質で特異な領域でロボットを導入するには、対応したナレッジ(知見)が必要だ」と説明する。トモロボは、現場で自身が鉄筋の結束作業を行っていた眞部氏の経験はもとより、さまざまな現場に即したナレッジが結集した製品ともいえる。
一方で眞部氏は自社の目的を「ロボット開発にあらず」と語る。「確実に建設現場を良くするためのソリューションを確立するために、その手段としてロボットを選択した」と、自社のスタンスを説明した。ちなみに、建ロボテックは「世界一ひとにやさしい現場を創る」をミッションに掲げている。
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