AMDlabは、ブラウザだけで動作する作図ツール「WEBBIM」の先行版を2024年11月まで、ユーザー数限定で無償提供する。先行版では専用ソフトウェアで行うことが一般的な「ボリューム検討」を備えている。
「建築設計」を中心に建築業界のDXを推し進めているスタートアップ企業AMDlab(エーエムディーラボ)は、建築設計者向けサービス「WEBBIM(ウェブビム)」の先行リリース版を2024年7月1日に発表した。2024年7月から11月までの期間限定で、ユーザー数を絞って無償提供する。
WEBBIMは、ブラウザで動作する建築設計者向けの作図ツール。先行リリース版では、建築のボリューム検討に必要な日影計算と簡易的な作図ができる。
現在、建築設計業務で、BIMの導入が推進されているが、国土交通省の調査では、普及率は48.4%、BIMの活用によるメリットや効果を大きく感じる利用者の割合は41.2%にとどまっている(参照:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>」)。
こうした状況について、AMDlabは理由を2つ挙げる。1つは、高度な技術や高価な機器とソフトウェアが必要となるためで、中小企業や地方の事業者にとって、導入の障壁となっていると指摘する。
もう1つは、BIMを活用しても業務効率化が十分に進まないことにある。例えば、建築設計の初期段階から竣工後の管理まで一貫した図面データを利用できることがBIMの利点だが、現場では企業ごとに異なるBIMの運用ルールが定められ、担当企業が変わるたびに図面データの調整が求められる。また、高度な計算には専用ソフトウェアが必須で、異なるソフトウェア間でのデータ移動も設計者の負担となっている。
その点、WEBBIMはその名が示す通り、ブラウザ上だけで動作し、高価なPCを必要としないので導入コストを抑えられる。
建築設計段階に応じた操作が容易なUI(ユーザーインタフェース)やBIMの運用ルールを標準化できるデータ構造で開発している。先行リリース版では、専用ソフトを使用することが一般的な「ボリューム検討」を備え、この時に作成した図面を次の建築設計段階でもそのまま利用できるため、図面の再作成は不要となる。
さらに、建築設計業務に必要な情報をWeb上で一元管理する「建物カルテ」に入力した情報も自動連携するため、文書情報と設計図間の整合性を確認する手間が軽減できる。建物カルテは2024年5月にβ版をリリースしたWebサービスで、Excelに代わる建築設計プロジェクトの情報管理ツールとの位置付けとなっている。
主な機能は、インポートしたファイルを下図として、敷地境界線と建物外形ラインを描画し、計算条件を入力することで、規制ラインと時刻日影線、等時間日影線を表示する。WEBBIMは、外部データの読み込みや計算結果の出力が迅速で、建築設計の初期段階で頻繁に行うボリューム検討の時間短縮につながる。さらに、建物カルテに入力した日影規制時間と測定面高さが自動反映されるため、情報の不整合を防げる。
建築設計機能では、ボリューム検討機能で作成したオブジェクトを活用しながら、作図を進められる。先行リリース版では、通り芯、壁、窓を描画し、表示モードは平面図と3Dビューに分かれ、それぞれの表示画面で作成したオブジェクトを確認できる。
また、複数の利用者が同じ図面ファイルを確認や編集可能な同時編集機能を実装している。従来のBIMは、ファイルを編集できるユーザーが1人に限られるため、進捗状況の確認には時間を要するが、WEBBIMで同時編集することにより、素早い情報共有と作業分担の効率化が実現する。
WEBBIMは、2024年7月から2024年11月末頃まで、無償でユーザー数限定にて公開する。対応ブラウザはWindowsOSでEdge、Chrome、MacOSでChrome。利用条件は、AMDlabとオンラインミーティング対応可能で、実案件で製品導入を検討できる企業。申し込み方法は、専用Webサイトのフォームから申請する。
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