建設現場で働く職人の多くはPCを使わず、キーボード操作にも慣れていない。神奈川エリア全域を地盤とし、建築塗装を中心に、足場の架設や防水工事も専門的に手掛ける熊澤建装が、いかにしてDXを推進してきたのか、その実例を紹介する。
神奈川県秦野市で創業した建築塗装会社の熊澤建装で、事業部部長を務める当摩秀幸氏は、「第8回 ジャパンビルド−建築の先端技術展−」(会期:2023年12月13〜15日、東京ビッグサイト)で「『施工=職人+DX』が成り立つ方程式とは」と題し講演した。講演では、ICTがDXが注目される一方、現場でなかなか浸透しない建設業界で、どのようにすれば現場でデジタル変革が進むのか、その答えを自社の実例を通して解説した。
メールすら不慣れな職人を相手に始まった熊澤建装の建設DXは、現在では従来10の手間がかかっていた業務が3分の1に削減され、経費削減でも目に見える成果が挙がっているという。
熊澤建装の社員は総数30人ほどで、高所作業や塗装に特化した職人以外にも、施工管理や外壁診断、アスベスト診断などの資格者を擁する。
当摩氏は2022年2月に入社し、熊澤建装をDXに導く取り組みをスタートした。当時は、社内にPCを使える従業員はほとんどおらず、施工管理も全てが口頭で常に行われていた。
そうした中で最初の課題となったのは、職人たちにどうやってデジタル化に向き合ってもらうかだった。そこで当摩氏が着目したのがスマートフォンだ。「現場で働く職人はPC操作に不慣れだが、LINEやゲームを通じてスマホを使いこなしている」と同時に、「スマホほど機能がデジタル化されて充実化しており、生活の変革をもたらすものはない」と気付いた当摩氏は、スマホを入口にDXの環境構築にトライした。
当摩氏はまず、スマホで使える修正図面のアプリケーションなど、さまざまなアプリやサービスを試してみた。しかし、これらは全て失敗に終わった。当摩氏が最終的にたどり着いたのが、LINEとGoogle ドライブ、Google Meet(GoogleのWeb会議サービス)を組み合わせたDXだった。
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