MODEは、生成AIとIoTのチカラで、建設業界を筆頭に多様な産業の課題解決を目指すスタートアップ企業。IoTのチカラとしては、IoTデータを集約して可視化するプラットフォーム「BizStack」が、前田建設工業など複数のゼネコンで活用されている。今回、生成AIを現場を最もよく知る作業員の部下やアシスタントと位置付けた機能を追加した。先行導入した山岳トンネル工事では、40%の時間削減などの効果が得られているという。
シリコンバレー発のスタートアップ企業MODEは2024年5月1日、生成AIとIoTのチカラであらゆる“現場”の分からない/見えないを解消すべく、IoTプラットフォーム「BizStack」の新サービスとして、AIアシスタント「BizStack Assistant(ビズスタック アシスタント)」の提供を開始した。
MODEでCEO 兼 Co-Founderを務める上田学氏は、2003年に2人目の日本人エンジニアとしてGoogleに入社し、「Google マップ」の開発に携わり、Twitterでは公式アカウントの認証機能や非常時の支援機能などのチームを立ち上げるなど、IT畑での豊富な経験を有する。
その後2014年には、Yahoo!出身のイーサン・カン(Ethan Kan)氏とともに、米シリコンバレーでMODEを設立。創業から2024年で10年目となるMODEは、サンフランシスコと東京に拠点を置き、総勢40人のメンバーで、主に生成AIとIoTを融合させたソリューション開発に取り組んでいる。
直近の2024年4月には、スタートアップ企業に対する投資ラウンドのシリーズBで、JR東日本グループのJR東日本スタートアップやSBIインベストメントなどから、総額12.8億円の資金調達に成功した。
上田氏は、MODEのビジョンを「世の中の“unknown”を明らかにし、データとテクノロジーで世界を“モードチェンジ”する」と示す。そのきっかけとなったのが、自身も開発に関わったGoogle マップの普及。
以前は紙の地図をはじめ、目的地の案内に特化したカーナビや携帯電話のマップが一般的だったが、Google マップでは店舗であれば、電話帳やレビュー、混雑状況などのあらゆる情報を集約し、地球上のunknown=未知の部分が無くなり、新たなビジネスチャンスの創出にもつながる。その実体験から、「現在は勘や経験に依存している仕事のプロセスをモードチェンジするため、IoTデータを使ってunknownを解消し、正確に理解するためのソリューション開発を思い至った。その具現化したサービスが、9年前から提供しているBizStackだ」と語る。
BizStackは、IoT機器で取得したデータを“見守る”、ゲートウェイで“つなぐ”、ユーザーインタフェースで“活用する”を1つにパッケージ。これまでの導入事例では、前田建設工業のダム建設工事現場で、地盤にコンクリートを流し込むグラウチング工程の地盤性状把握に用い、作業量を半減する効果を上げている。以前は、作業員が現場を歩き回って計測していたが、IoT機器を設置し、施工データと間隙水圧計データを自動で取得することで、作業プロセスそのものが簡略化した。
また、西松建設の場合は、トンネル工事で各種設備のモニタリングに活用。排水を川に流す前に処理する濁水設備や水中ポンプ、コンクリを製造する大型施設のバッチャープラントなどを人による巡回点検から、IoTセンサーによる常時監視に切り替えた。「いろいろな設備を次々にIoTで網羅していくことで、今までは正確に把握できなかった部分がひとつずつひっくり返り、稼働状況などが分かるようになった」(上田氏)。
物流分野では、ニチレイ・ロジスティクスエンジニアリングの全国にある冷凍倉庫をリアルタイムで監視。10階建ての建物を丸ごとカバーし、1カ所あたりで1000個以上の商品の動きを測り、データを日々蓄積している。現在は、集まったデータ資産をどのように業務効率化に生かすかを検討しているという。
これまで、さまざまな現場のデータを集め、活用することで、unknown=見えない/分からないを改善してきたBizStackだが、データを閲覧するインタフェースの「BizStack Console」には、「PCの前にいつもいるわけではない」「コンピュータ言語を知らないと設定が難しい」などの現場からの要望が寄せられていた。
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