生成AIとIoTで建設現場の“unknown”を無くす!西松建設の工事で4割時短したMODEの頼れるAI部下AI(2/3 ページ)

» 2024年05月23日 13時47分 公開
[石原忍BUILT]

「BizStack Assistant」はあなたの現場を1番よく知っているAIアシスタント

 転機となったのが生成AIの「ChatGPT」の登場だ。上田氏は「生成AIをBizStackに融合させれば、現場のニーズにも応えられるのではと思い付き、BizStack Assistantをリリースした。従来のようにPC画面を操作するのではなく、現場で欲しい情報を自然言語の日本語で聞けば、必要な情報を優秀な部下のようにAIが返してくれる。これからは、日本だけでなく、韓国や中国の人口減、欧州での労働者不足など、労働人口の減少が世界的に深刻化する。そのため、日本で先行して解決し、世界へ広げるという“地球上の挑戦に、生成AIで応えていく”をスローガンに展開していきたい」と抱負を口にする。

業務の悩みを解決する「BizStack Assistant」 業務の悩みを解決する「BizStack Assistant」 提供:MODE
MODE プロダクトマネジャー 渡邊飛雄馬氏 MODE プロダクトマネジャー 渡邊飛雄馬氏 筆者撮影

 MODEで製品の商品企画などを担うプロダクトマネジャーの渡邊飛雄馬氏は、BizStack Assistantを「あなたの現場を1番よく知っているAIアシスタント」と位置付ける。

 BizStack Assistantは、50社以上50種類以上のセンサーに対応し、多様な設備からデータを集める基盤技術のBizStackと、データ構造化技術のEntity(エンティティ)モデル、LLMを使いこなす技術の3つのテクノロジーで構成している。このうち、データの構造化技術は、IoTデータは、拠点ごとやシステムごとにサイロ化した結合できないデータベース群や散乱するファイル、縦軸と横軸がそろっていない命名規則が不明なテーブルなど、“データレイク”という使えないデータの沼を作りがち。

 そこでMODEは、BizStackに搭載している独自の「Entityモデル」を活用している。Entityは、現実世界の実体(実在物や概念)にデータを当てはめることを意味し、「IoTセンサーからデータを取ってくる瞬間からデータを構造化して、ぐちゃぐちゃなデータレイクを作らずに、階層構造でデータを適切に保管する仕組み。当社では、こうした仕組みをデジタルツインと呼んでいる。デジタルツインは3Dかどうかではなく、現実世界をモデル化して、対応するデータを当てはめて、本当に活用できる状態にしているかどうかが重要だ」(渡邊氏)。

「BizStack Assistant」独自のEntityモデル 「BizStack Assistant」独自のEntityモデル 提供:MODE

 データの構造化とは、IoTデータを現実世界と紐(ひも)付けたデジタルツインで、時系列やログ、属性、ファイルごとにあらかじめ分けているため、○○工事の○日のデータなどピンポイントにアクセスできる。○○事業所以外は、○○プロジェクトのデータは参照不可などのアクセス制御も、階層構造ゆえに簡単に設定可能なメリットがある。特にMODEのEntityモデルは、データ収集直後から、データを整理して使える状態にするクレンジングをしているのが、他に無いMODE独自の技術となっている。

 BizStack Assistantの肝となるLLM(大規模言語モデル)そのものは、質問に対する回答や自然な会話、既知の情報を扱うのは得意だが、最新の知識やデータの集計や計算が苦手とされる。そのため、LLM用のツールを作り、LLMに考えさせずに、データを参照したい場合はBizStackが値を持ってきて、LLMに答えさせる仕組みとしている。エンティティモデルでデータが事前に構造化されているので、ファイルの場所やファイル名をその都度指定しなくても、自然に問いかけるだけで済む。LLMで問題になりがちな、事実と異なる誤った情報の提示やウソをつく“ハルシネーション”も起きない。現状はGPT3.5ベースのLLMだが、今後より良いモデルが現れれば、時代時代に最適なものに変更していくことも見据えている。

「BizStack Assistant」のLLMを使いこなす技術 「BizStack Assistant」のLLMを使いこなす技術 提供:MODE

 データ版で先行導入している西松建設の山岳トンネル工事では、坑内のカメラやIoTセンサーの取得データをBizStackに集約し、先端にあたる切羽などの状況も、その場に行かずに、BizStack Assistantに問い合わせて確認している。こうした利便性により、西松建設の現場監督によれば、点検や異常対応などに要する時間の40%削減を達成したとのこと。「現場がどうなってるかを1番分かっていて、その現場にあるものがどういったものなのか、いま何をしなければならないのかを適切に教えてくれるパートナーがBizStack Assistantだ」(渡邊氏)。

西松建設の「BizStack Assistant」活用事例 西松建設の「BizStack Assistant」活用事例 提供:MODE

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.