パネスディスカッションでは、大林組の岡野氏が「デジタルを前提とした業務プロセス変革」としてDXを捉えていると示した。「社会変化に合わせた業務変革であり、デジタルが先行してどんどん進むものではなく、あくまで社会の変動や変化にフィットさせるために業務が進化する。そこで必要ななのが、デジタルをベースとした業務環境の考えだ」。
実現には、ある程度遠くを見据え、そこから逸れないようなデジタル投資を行わなければならない。大林組は、デジタル先行型の投資ではなく、将来どのようになるのが理想となるのかを見据えた上でのDXを重視し、「現在(いま)とあるべき未来をDXでつなぐ」のスローガンも掲げている。
岡野氏は、DXの先にあるものとして「SX(サステナビリティトランスフォーメーション)」の概念にも触れた。SXは人類が将来的に生き残っていくために必要な概念で、その手法がDXという位置付けになる。
鴻池組の橋本氏は、「DX自体を“目的ではなく手法”と捉え、DXを進めることで競争力や品質の向上、競争力の維持などの成果につながる」と口にした。
鴻池組は、2年ほど前に「デジタル推進室」を設置。当初は2024年問題や働き方改革への対応が主な目的だったが、橋本氏は今ではDXの一環の施策とみている。デジタル推進室では、「DXの“しわ寄せ”が現場で働く作業員や協力会社に及ばないようにすることを第1に考えている」と理念を語った。
東急建設の小松氏は、DXは単にITやICTを使うことではなく、新しい技術を採用して、建設業そのものを変えたり、魅力ある業界にしたりすることが目的だとした。
西松建設の坪井氏は、DXの目的や何を実現したいかについて、“西松DXビジョン”を提示しながら、DXの方向性を解説した。
西松DXビジョンは、「現場がシンカしたスマート現場」「一人一人が活躍できるワークスタイル」「エコシステムで新しいサービスを創り出す新ビジネス」の3つの柱で構成している。その先に、ビジネスや財務へのインパクト、事業価値創出、チャレンジして変革し続ける風土を醸成し、持続的な企業価値創造をDXで実現することを目標に定めている。
大林組の岡野氏は、「データドリブンによる経営情報と生産情報の融合が起こる」とし、いかに合理的に実行するかが課題とした。
岡野氏によると、「現代は先が見えない時代。第1次産業革命からはじまり、Society 5.0に至るまで、産業革命の間隔はどんどん短くなっている。シンギュラリティが2045年、Society 5.0は2050年とされているが、早まる可能性もある。そうした変化が目まぐるしい状況下では、30年といったスパンで将来を予測することはほぼ難しい」と分析する。
そこで、経営目線では中期経営計画の中のデジタル戦略が大切になる。「5年先や10年先ぐらいであれば、デジタルの方向性が予測できるとの認識を示す。その中でマイルストーンを落とし込み、施策を実行に結び付けることがこの時代にできる1番合理的な方法だ」(岡野氏)。
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