鴻池組の橋本氏は、DXによって業務プロセスと施工プロセスを変革し、そこから生産性向上を目指すことをイメージしているとした。ただ、技術や環境はどんどん変化する。そのため、現時点で思い描く姿も半年や1年後には変わっている。橋本氏は、対応するため、自身が変わりながら成長する企業や部門が必要との認識を示した。
橋本氏の弁では、鴻池組でのDXはスタートしたばかりで、現時点ではデジタル変革の推進をイメージしてもらえる会社となるべく、文化の醸成に取り組んでいる。
東急建設の小松氏は、DXによって「働く喜び」「働く楽しみ」「働く活力」を盛り上げたいと語った。昔から、建設業は3K(キツイ、汚い、危険)な職場とされてきた。小松氏は、DXによって「新しい6K」にしたいという。6Kとは、「給料が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」「効率的」「現場がきれい」「カッコいい」の達成だ。
小松氏は、DXで果たして実現できるかどうかは未知数としながらも、「やらないとできない」と力強く訴える。小松氏は、協力会社や現場で働く人たちも含め、建設業界に活気を与える仕組みがDXと説明した。
この後、モデレータの松田氏は、DXに取り組む苦労について話を振った。最初に、パネルディスカッション前の基調講演に登壇した大林組の岡野氏が、DXに取り組むに至った経緯を説明。大林組のDXは、岡野氏が旗振り役となっているが、まず戦略の方向性を決め、内容を1つずつ検証しながら進めたという。その一例としてセキュリティに関しては、多額の投資が必要なゼロトラストに対しても、必要であれば先行投資しているとのことだ。
こうしたDXに向き合う姿勢は徐々に社内へ浸透し、若い世代も育ってきている。岡野氏は、「変革を受け入れて社会やビジネス環境の変化に柔軟に対応し、自らがさらなる変革を自発的に行っていこうとする企業マインドセットができれば、DXは自然に流れていくのではないか」と提言。
西松建設の坪井氏は、DXに向けた取り組みの効果や実効性の評価に悩みを抱いている。DXは資本コストを投入し、その結果は将来の財務改善や業績向上につながる。しかし、ダイレクトの反映ではないため、「何をいつまでにやる、いつまでにできなかったら止めるというところまで含めてしっかりと歩みの評価をしていうのが欠かせない」。
さらに、「(DXによって)社員のエンゲージメントを上げることが直接、企業価値を底上げする」とし、現在は“今、どれだけDXの気分になっている”“どこまで進んでいる”かを数値化して把握できるようにしていると紹介した。
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