建設業が抱える課題について同社がヒアリングを継続するなか、これまで話題の中心だった「IT化」に加えて、最近特に注目されているのが、事務作業を含めた業務の「外注化」だという。残業時間の上限規制が適用されるいわゆる「2024年問題」への対応として、「大手ゼネコンを中心にIT化をさらに推進するとともに、それでも削減できない業務に関しては外注する方針を打ち出している」(立松氏)。
そこでアドバンスト・メディアは2023年10月、建設業界特化型の人材サービスを提供する子会社「アミサポ」を設立し、既に多くの現場の検査代行や写真整理業務を請け負っている。さらに同月、建設現場に特化した議事録代行サービス「AmiVoice スーパースクライバー」をリリースしている。
建設現場ではデベロッパーや設計者、協力会社など複数の利害関係者が随時打ち合わせしており、エビデンスとして議事録を残すことが求められる。従来は主に若手社員が行っていた作業だが、残業の上限規制により外注化の動きが見られる。AmiVoice スーパースクライバーでは、会議のテキスト化から要約、整文までの、議事録作成を代行する。
高精度の音声認識サービスを活用しても、テキスト化するだけでは議事録としては成立しない。同サービスでは、AmiVoiceの議事録作成プラットフォームで書き起こした会議内容を、ChatGPT(Azure OpenAI Service)で要約し、建設現場での作業経験があるアミサポの専門人材が修正作業を行って仕上げる。修正作業には音声キーボードを活用して行うため、キーボード操作の習熟度に関係なくスピーディーにテキストの修正が行える。一般的な議事録作成サービスよりも短納期を実現する。
現在はまだ試験段階であり、議事録作成を受託した際は、ユーザーの許諾を得た上で学習データとしても使用している。現場に特化して音声認識エンジンを強化することで認識精度の向上を図る。また、建設会社から提供を受けた議事録のデータを活用してChatGPTのファインチューニングも行い、要約の精度向上にも取り組む。
立松氏は「音声認識エンジンの精度は90%程度まではデータ量に依存する。さらに、当社の強みである、パラメータの調整や重みづけなどのチューニング力により、建設現場用の音声認識エンジンとして普及させていきたい。一方で音声認識や要約の精度を向上しても、誤認識をゼロにすることは難しい。最後は人間が目視で確認する必要があるため、専門人材の育成にも力を入れる」として、引き続きサービスの品質向上に取り組み、よりスピーディーかつ安価に提供できる体制を整える方針を示した。
次の展開では「画像認識AIを搭載したサービスも検討している。また、アミサポでは仕上げ検査代行サービスの引き合いも強いことから、現在の数人体制から、今期中に30人程度まで増員を計画している。AI技術に加え、アミサポの人材サービスも組み合わせて提供することで、現場の業務効率を改善する活動を継続していきたい」(立松氏)と語った。
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