日立など4社が地下埋設物の調査データ活用で、市場拡大に向け覚書締結 BIM/CIM連携も視野にスマートメンテナンス

日立は、NTTインフラネット、アイレック技建、応用地質と、地中レーダーなどで得られる地下埋設物の調査データ活用を道路管理者などに広げるべく、覚書を締結した。4社は地中レーダー探査やAI解析など、地下埋設インフラ整備のデータを活用し、業務効率化の整理やユースケースの創出、各社既存サービスの高度化を行っていく。

» 2024年03月14日 09時00分 公開
[BUILT]

 日立製作所は、エヌ・ティ・ティ・インフラネット(NTTインフラネット)、アイレック技建(アイレック技建)、応用地質(応用地質)と、地下埋設インフラの整備事業の推進支援を目的に、地中レーダーなどで得られる地下埋設物の調査データ活用市場の拡大検討に関する覚書を2024年1月に締結した。

 覚書に基づく4社連携で、地中レーダー探査やAI解析結果など地下埋設インフラの整備に関するデータを活用し、業務効率化の整理やユースケースの創出、各社既存サービスの高度化を図り、全国の道路管理者や地下埋設インフラを持つ占用事業者などのデータ活用を促進し、市場の拡大を図っていく。

地下埋設インフラの設備更新と5年で約4000キロの無電柱化などのニーズに応える

 覚書では、地下埋設物の3次元位置情報を可視化し、一元管理する「地中可視化サービス」を提供する日立と応用地質、無電柱化の推進とICTを活用した社会インフラ分野の課題解決に取り組むNTTインフラネット、非破壊探査事業を推進するアイレック技建が協働することで、インフラ事業者に寄り添った観点で調査データの活用方法を検討する。

 また、4社が協力することで、インフラ事業者などへの発信力を強化し、調査データの活用により、地下埋設インフラ整備に向けた関係者間での円滑な協議や調整につなげるなど、データ活用の高度化や普及促進を図る。

覚書締結に基づく具体的な施策のイメージ 覚書締結に基づく具体的な施策のイメージ 出典:日立製作所プレスリリース

 高度経済成長期に整備された地下埋設インフラは、老朽化や災害の激甚化/頻発化への備えとして、設備更新などの対策が急務となっている。厚生労働省の「防災・減災、国土強靱化のための5カ年加速化対策」では、老朽化が進む上水道管路の耐震化の推進計画が策定されている。加えて防災、交通安全、景観形成の観点での電線類を地中へ埋設する無電柱化の必要性の高まりから、国土交通省は2021年度に新たに「無電柱化推進計画」を策定。10年間での上水道基幹管路の耐震化率の約20%向上、5年間での約4000キロの新たな無電柱化への着手が必要とされている。

 昨今、地下埋設インフラでは、事業全体で建設生産/管理システムの効率化が重要視され、計画通りの事業推進や事業の迅速化が求められている。しかし、地下埋設インフラは直接目視による現況確認ができず、各インフラ事業者の管理データと実態が異なり、工事着手後の設計変更や中断などで、計画通りの事業推進が困難なケースが生じている。

 こうした背景を踏まえ、4社は、地下埋設インフラの整備事業で、より正確な現況の把握、計画通りの事業推進/迅速化に向け、地中レーダー探査で得られる現況の管路情報などのデータ活用の高度化や普及を目指し、覚書締結に至った。

 具体的には、地中探査などで得られる地下埋設物の調査データの活用、データ活用時のコストやリードタイムなど有用性の評価、ユースケースの整理を行い、事業を推進する全国の管理者へ発信し、データ活用の導入や適用を目標に定める。

 覚書締結により、インフラ事業者などがデータ活用により実際の現況把握に基づく設計の実現やインフラ事業者同士のデータ連携で、埋設区間や埋設位置などの整備内容を事前に調整することで、各工程の所要時間の最適化につなげる。

 日立製作所は、これまで推進してきた「地中可視化サービス」の実績や導入効果、ユースケースなどの知見を生かし、BIM/CIMとのデータ連携などで、高度なデータ利活用や設計通りの施工推進などの展開を見据えている。NTTインフラネットは無電柱化事業などの道路掘削工事のスピードアップに貢献し、アイレック技研はNO-DIG総合エンジニアリング企業として、保有する地中探査技術やノウハウを最大限に用い、無電柱化事業の事業期間短縮とコスト削減を見込む。

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