国土交通省、東京都、中央区、首都高速道路で構成する検討会は、国の重要文化財である「日本橋」を覆う首都高を地下化するルート案を示した。工事区間は、神田橋JCT(ジャンクション)〜江戸橋JCT間の約1.8km(キロメートル)で、このうち地下に潜るのは約1kmほどで、東京駅北側のJR線の手前にあたる新常盤橋付近から地下化し、都営浅草線の手前の江戸橋近くで地上に出る。
首都高日本橋の地下化検討会が2018年5月22日、東京・霞が関の中央合同庁舎3号館で開催され、国土交通省や東京都、中央区、首都高速道路の各担当者が出席し、工事の対象区間とルート案が示された。ルート案は、都心環状線の交通状況を踏まえ、江戸橋JCTの都環ランプを撤去し、八重洲線を最大限活用するもので、周辺地区の再開発事業との連携も見込んだ形となった。
2017年11月の初開催に続く第2回となる今回は、前回議論された地下化に向けた課題検討を踏まえ、首都高速の日本橋エリアで、どの部分を地下化するかをとりまとめた案について話し合った。
現在、東京都中央区の日本橋川沿いエリアでは、「常盤橋プロジェクト」と「日本橋1丁目中地区」が都市計画を決定して開発が進められている。他にも、「八重洲1丁目北地区」「日本橋1丁目1・2番街区」「日本橋1丁目東地区」「日本橋室町1丁目地区」の再開発も計画されている。
こうした都市計画や街づくりの進捗(しんちょく)を踏まえ、日本橋上空の首都高地下化工事は、首都高の大規模更新区間の竹橋〜江戸橋2.9kmのうち、神田橋JCT〜江戸橋JCTの約1.8kmと設定した。この区間には、構造・ルートと交通機能のクリアすべき2つの課題があるとされ、今回は対応策が示された。
構造・ルートに関しては、地下化する区間に日本橋川をはじめ、JRの基礎杭、東京メトロ半蔵門線・銀座線・浅草線などの障害物がある。これらの構造物との干渉を回避するために、既存の首都高八重洲線トンネルを活用する。
工事中の日本橋川への影響は、水理模型実験を行い、水位上昇を抑えられる対策工を既に確認した。下水道・電力・通信・水道・ガスなどのライフラインは、近接・干渉する場合は移設も視野に入れた検討が必要とした。
具体的にルート案をみると、鎌倉橋上空から既存の八重洲線トンネルに入り、JR線を潜ってかわす。江戸橋付近では、地上に出て浅草線を越え、江戸橋JCTで合流する。この区間で、日本橋川を地下で横断しなければならず、再開発事業の地下部分との連動が求められる。
また、神田橋JCT〜江戸橋JCTの区間は、平日7〜19時の流入交通量が5.7万台、流出交通量が4.6万台もあり、ピーク時の18時には都環外回りの下りで、竹橋JCT近くから箱崎JCTまでの3kmほどで慢性的に渋滞が発生する。原因は、1号上野方面、6号茨城方面、7号千葉方面、9号湾岸方面の4方向の放射系路線が分合流しているためで、このJCTは交通が集中し構造的にも複雑な状態になっている。
江戸橋JCTを通過する台数は4万9700/日で、このうち都外の常磐道や京葉道路、湾岸道路に抜けていく車は4万400台/日。残りの9300台/日は京橋JCTへ向かう都心環状線の利用者となる。検討会では、地下化に合わせ、江戸橋JCTの都心環状線へのルートをあえて整備しないことで、江戸橋JCTまで行かず、その前の神田橋JCTから南下して西銀座JCTに向かう交通量が増え、渋滞が軽減されると提案した。同様に内回りについても、都環ランプを作らないことで、江戸橋JCTへの負担軽減につながるとした。
最後に出席者からは、東京駅前八重洲一丁目東地区の地下バスターミナル計画との連動や築地の再開発による交通量の影響、歩行者空間も含めた地下埋設物に対する基本的な方向性、工事の安全を確保する施工方法などこれからの検討すべき課題が挙がった。
今後のスケジュールは、2018年夏ごろに開催する第3回検討会で、八重洲線の機能強化と大型車交通のネットワーク機能の確保について検討し、プロジェクトの肝となる概算事業費および事業スキームをとりまとめる。
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