そこで、大成建設では6軸のロボットアームに吐出ノズルを取り付け、鉄筋面にノズルを傾けてアプローチする手法を採用した。しかし、本体が移動しない一般的なロボットアームでは、構造物の向こう側でノズルを傾け、適正な鉄筋かぶりで施工するのは難しかった。そのため、ロボットアームをレールでスライドさせる“7軸”の自由度とし、改善を図った。ロボットアームが横方向にスライドすると、構造物の向こう側に回り込んで、適正な鉄筋かぶりの3Dプリントが実現する。
適正な鉄筋かぶりは、橋脚などでは柱の断面積の縮小にもつながり、材料の無駄削減や施工時間の短縮ももたらされる。
次の展開として木ノ村氏は、「実現場でのオンサイト3Dプリンティングの実証を計画している」と説明し、今後は構造躯体の本格適用に向け、3Dプリンティングで製作した構造体の力学特性や施工ノウハウを蓄積していく。
木ノ村氏によると、現段階は完成形ではなく、改善しなければならない部分もあると話す。柱のような形状で断面積が比較的小さい物体であれば、現状のシステムでも裏側に回り込んだ施工ができるが、長い壁状の物体で向こう側に回り込んで施工するには一考が必要となる。既に検討は始まっているとのことなので、こうした課題をどのようなアイデアで乗り越えるのか、大成建設の建設用3Dプリンティング技術の進化に期待したい。
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