ここ数年、日本でも連続した台風の到来や集中豪雨、気温上昇など、気候変動の影響が目立ってきている。東京大学大学院 工学系研究科の特任研究員 博士の山崎潤也氏は、国土交通省が進めるeD都市モデルのオープンデータ「PLATEAU」を活用して、将来の気温予測に取り組んでいる。
アルテアエンジニアリングは2023年8月24〜25日、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)にて、シミュレーション、HPC、データ分析など最新のソフトウェアテクノロジーに関するイベント「ATC Japan 2023」を開催した。
本稿では、東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 都市計画研究室 特任研究員 博士(工学) 山崎潤也氏による「3D都市モデルを活用した気候変動影響シミュレーション」と題した講演を振り返る。山崎氏は気候変動影響シミュレーションに、国土交通省が主導して全国の都市を3Dモデル化するプロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」の都市データと、アルテアエンジニアリングのCFD(数値流体力学)解析技術を活用している。
講演では、気候変動シミュレーションの例として、名古屋市錦二丁目地区と東京都西東京市の例を示した。
名古屋市中区錦二丁目地区は、名古屋駅と栄地区の間に位置し、街づくり活動が活発に行われている土地柄。エリアでは「錦二丁目まちづくり協議会」に加え、2020年に設立したさまざまな主体が街づくりの構想、研究、共創を進める実験の場「錦二丁目エリアプラットフォーム(N2/LAB)」があり、シミュレーションや実証実験などを実施しやすい環境が醸成されている。
東京都西東京市は、農地と宅地が混在している市街地だ。農地は宅地になる可能性があるが、もし農地を将来にわたって残した場合、温熱環境がどう変化するのかをシミュレーションした。
山崎氏は、気候変動への対策として、「緩和」と「適応」の2つの軸を示した。緩和は、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を減らす考え。適応は、自然環境の在り方を調整して、気候変動に順応させる。
このところ、明らかに気候変動が以前とは異なると感じる場面が多い。特に気温の上昇は、継続的に進行することが確実視されている。既に、現時点でCO2の排出が世界全体でゼロになっても、しばらくは気温の上昇が続くことが学術的に明らかになっている。そのため、地球上で生きる人類には、気温の上昇に適応する備えが必要になる。今回の講演のテーマも、適応に重きを置いている。
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