既存建築物のZEB化を推進するには、施工例を公開するのが効果的だろう。今回の京都市との取り組みでも、市所有の物件はその改修事例を見学施設とする提案も含んでいる。
取材時点で既に公開しているビルは、2023年3月にZEB Readyを取得した京都市南区の「パナソニック京都ビル」。ZEB Readyは、一次エネルギー消費量の50%以上削減を実現した建物を指す。
パナソニック京都ビルの構造と規模は、鉄骨鉄筋コンクリート造地上5階建て、延べ床面積は2969.3平方メートル。パナソニック エレクトリックワークス社では、設備改修だけでZEB化しやすい建物の規模を5000平方メートル未満程度としており、その中でボリュームゾーンとなるのが2000〜3000平方メートルで、3000平方メートル弱のパナソニック京都ビルはZEB化のユースケースとして最適な実例となっている。
パナソニック エレクトリックワークス社は、ZEBのビジネス展開にあたり2019年10月に「ZEBプランナー」に登録。全国を対象とするZEBプランニングの目標としては、2030年度に件数280件、需要創造の金額としては220億円を掲げている。
京都のように厳格な景観条例で建物の見た目を変更できない地域の他にも、工期や予算、屋外工事ができない時期など、建物外皮の工事が難しい案件は多い。現在ノウハウを蓄積中のパナソニック エレクトリックワークス社であれば、外皮の変更を行わずZEB化できる可能性は高い。事実、パナソニック京都ビルでは、1フロアあたり3日で空調設備のリプレースが完了した。
パナソニック京都ビルのZEB化は、照明と空調設備を換装し、各種センサーで省エネ制御している。照明は照度計算で機器をダウンサイジングし、明るさも適切に落として運用している。
背景には、執務業務がPC画面を使ったものに移行したから可能になったことも理由の1つ。バックライト画面を見る業務では、従来よりも照明を落としても支障をきたさない。さらに、明るさセンサーが外光、人感センサーが人の在不在を検知し、照明を適切な状態にコントロールして、無駄な点灯や明るすぎを防いでいる。
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