安全性を高める製品として映像資料で紹介したのは、「ガードマン(Guardman)」で、自動車の緊急ブレーキシステムに似た装置だ。「ロードローラの後進時に労働災害が起こらないよう、死角になりやすい場所をセンシング装置で監視し、危険を察知した際に緊急ブレーキを作動させるシステム」(製品説明担当者)。昼夜を問わず、車両速度に応じた適切なブレーキタイミングを自動で判定する。担当者いわく、「量産型ロードローラに緊急ブレーキシステムを搭載したのは、日本ではおそらく当社が最初」とのこと。
ガードマンには、大型車両用と小型車両用の2種類があり、前者は車体の高い位置から後方を見下ろすような箇所に3D LiDARを設置して、人や障害物を監視する。一方、小型車両用は、工事路面からの湯気や土埃を考慮して、79GHz帯のミリ波レーダーで危険を察知する。
生産性に関しては、自動運転技術として自律走行式ローラ開発の取り組みを映像資料で説明した。自律走行式ローラ開発は、2019年にスタートした、A&A(Auto Sensing×Auto Control)サービスを手掛けるIoT企業「JIG-SAW」との共同プロジェクトで、これまで開発機を使用してさまざまな企業との実証実験を重ねている。目標経路に対するズレは、最大20センチ程度で、規定回数で転圧された作業面積は有人比3.5倍、有人作業より少ないレーン数での転圧完了などの成果を上げている。
自律走行による高い走行精度による効率化と省人化で、生産性の向上だけでなく、結果としてCO2の排出量低減にもつながる技術だという。現在は「コンパクションマイスターやガーディアンと組み合わせることで、締め固め管理の質や作業の安全性の高め、自律走行での生産性を総合的に高める開発にも挑戦している」(担当者)。
展示ブースでは、「品質」「安全性」「生産性」の各テーマとは異なる酒井重工業の取り組みも披露されていた。それは、ブースに唯一展示された建機として、ホンダの着脱可能バッテリーを搭載したハンドガイドローラのコンセプトモデルだ。エンジン部分を電気モーターに置き換え、他は従来のロードローラと同様に、油圧機構で駆動する。
建機の電動化は、世界的なトレンドで、フル電動方式の建機も既に市場に投入され始めている。その中で今回、酒井重工業が電動油圧式建機の開発を進めたのは、市場投入時期を短縮する狙いがあるからだという。「CO2排出ゼロだけでなく、メンテナンス性の向上によるランニングコスト低減、動作音の低減による作業環境の向上といった施工ならではのEV化へのメリットも踏まえながら、フル電動方式の建機の開発を進めているが、もう少し時間がかかる。まずは、電動油圧式の建機を市場に投入して、できるだけ早くCO2排出ゼロに貢献したい開発したい」(製品説明担当者)。
酒井重工業は、2050年にCO2排出ゼロを達成できる製品を、全製品でそろえられるよう、研究・開発の歩みを続けていく。
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