環境省の熱中症予防情報サイトから、全国の主要地域の暑さ指数が発信されていますが、屋内、屋外、高所、閉所など、さまざまな作業環境が存在する建設現場では、作業エリアごとにWBGT値を測定することが効果的だと考えられます。今では、WBGT値を測定するデバイスと通信システムを組み合わせたシステムも登場しています。それは、建設現場の作業エリアごとにデバイスを設置してWBGT値を収集し、指数の高いエリアでは、作業強度を下げるように、管理者に注意を促すようなWBGT監視システムです。
ただし、熱ストレスへの耐性は個人によって異なり、普段は暑さに強い人でも、体調が悪ければ安心はできません。そこで、近年注目されているのは、作業員に装着可能なセンサーデバイスを用いて、作業員の状況を可視化し、健康や安全を見守るサービスです。センサーデバイスから脈拍や体温、活動量(身体作業強度)などの生体(バイタル)情報と、温度や湿度などの推定WBGT値を収集して、クラウド上へデータを送信して解析し、危険と判定される場合には、事務所の管理者や現場監督に通知する仕組みです(図-1)。
作業員に装着するセンサーデバイスもさまざまなタイプがあり、収集できる情報もメーカーや機種によって異なります。ここでは、熱中症対策を想定したバイタル情報を収集可能なウェアラブルタイプのデバイス群を紹介しましょう。
1.腕時計型
このタイプは、Apple Watchの登場により、一般の方にも浸透していますし、装着経験のある読者の方も多いかもしれません。一般的には脈拍や体温(または周囲温度)、機種によっては血圧や発汗量を測定するものもあります。最も普及しているタイプだと思いますが、力作業が多い現場では装着が好まれない場合もあります。
2.ヘルメット型
ヘルメットの外部や内部にセンサーを取り付け、温度、脈拍などを測定するタイプです。建設現場ではヘルメット装着は必須なので、親和性が高く、ヘルメットの着脱を検知して自動的にデバイスの電源ON/OFFするような機種もあります。高機能なデバイスになるとヘルメットの総重量が重くなってしまうこと、ヘルメットとのセットにより高価になる傾向があることが、今後の課題です。
3.ウェア型
シャツとデバイスが一体化した、まさにウェアラブルなデバイスです。体温(シャツ内の温度)、脈拍などを高精度に測定可能とされています。作業前に専用シャツを着なければならないという煩わしさもありますが、今後の進化が期待されるタイプでもあります。
こうしたデバイスは、熱中症対策以外にも、位置検知や転倒検知を備えるものも多く、後述するメリットもあり、作業員の安全を見守るツールとして今後も開発競争が激しくなっていくでしょう。
センサーデバイスで取得されたバイタル情報は、タイムリーにクラウドに送信する必要があります。データをクラウドに送信する方法は、大きく以下の2種類になります。
1.センサーデバイスに通信機能を組み込み
一例としては、センサーデバイスにSIMカードを挿入し、LTE-M回線などを利用してクラウドへデータをアップロードする方式があります。LTE-M回線であれば、安価な通信料でデータを送信できます。一方で、センサーデバイス自体の価格が高くなるといったデメリットもあります。
2.スマートフォンとBluetoothで接続
センサーデバイスがBluetoothを介してスマートフォンと接続し、スマートフォンからクラウドへデータをアップロードする方式です。通信のためにスマートフォンが必須ですが、現場の作業員にとってこうしたデバイスは、できるだけ少なく軽い方が好まれる傾向にあります。
それぞれに一長一短がありますが、作業員にスマートフォンが配布されているような場合にはスマートフォンとBluetoothで接続するタイプがコスト的にメリットがあるかもしれません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.