地方都市「広島」でもBIM設計をスタンダードに!広工大と大旗連合建築設計にみるBIM人材育成と実践例Archi Future 2022(3/4 ページ)

» 2023年03月22日 06時30分 公開
[加藤泰朗BUILT]

社員のBIM習熟度を効率的に上げる体制構築が重要

 続いて登場した大旗連合建築設計の高橋氏は、「決して最先端の内容ではないが、地方設計事務所のリアルな状況を表している」との見解を示したうえで、自社のBIM活用を紹介した。

大旗連合建築設計 設計部 課長 高橋智彦氏 大旗連合建築設計 設計部 課長 高橋智彦氏

 大旗連合建築設計は、広島を拠点に活動する1948年設立の老舗組織設計事務所。社員総数は46人(2023年3月時点のWebサイト公表値)。医療/福祉施設から、学校などの教育施設、文化施設、商業施設、官公庁プロジェクトまで、幅広い分野で設計業務を手掛けている。

 大旗連合建築設計がBIMに着目した時期は早く、日本のBIM元年といわれる2009年には、GraphisoftのArchicadを導入。ただ当初は、「静止画や動画の作成に活用できれば十分」という程度の認識で、導入後の約9年間はあくまでも空間を検証するツールとしてBIMを使用し、実施設計の図面は従来の2DCAD(Jw_cad)で描くというスタイルだった。

大旗連合建築設計のBIM導入状況の推移 大旗連合建築設計のBIM導入状況の推移

 一方、実施設計図とBIMモデルが連動していないことによる作業効率の低下に反して、他社のフルBIM活用の成功事例を耳にするようになり、自社のBIM活用に疑問を抱くようになった。その後、2018年に杉田氏が主催する「ヒロシマBIMゼミ」に参加したことが後押しとなって、2019年にBIMを使った実施設計に初めて着手した。

BIMと2DCADという2つの業務を並行して行うため、限界を感じるほどに作業負担が圧し掛かっていた BIMと2DCADという2つの業務を並行して行うため、限界を感じるほどに作業負担が圧し掛かっていた

 高橋氏は、「ヒロシマBIMゼミで、既に実務で活用されている方の生の声や、その場で直接モデルを拝見することで得た情報をひとつひとつ会社に持ち帰り実践することから始めた。幸いにも同時期に、BIMを扱っている施工者と協働するプロジェクトに数回恵まれ、設計を通じてモデル情報の検証法や活用のノウハウを学べたことが良い経験となった」と当時を振り返る。

 最初の案件は、プロポーザルで選定され、基本設計が進められていたものの、BIM導入は一筋縄ではいかなかった。「初挑戦であり、建物規模が6階建て6850平方メートルと比較的規模が大きかったため、適切な図面表現ができないなど苦労した」と回顧する。結果、スピード重視の観点から、一部に従来通り2DCADを併用することになった。それでも高橋氏は、「オールBIMではないが、モデル情報から一般図、平面・断面詳細図、建具表を作成し、ようやくBIM設計のスタートラインに立つことができた」と評価する。

 2019年のプロジェクトでは、オールBIMを合言葉に、RC造2階建てオフィスビルの設計に取り組んだ。仕様書関係以外は、意匠図の全図面をモデル情報とリンクさせて作図することに成功。設計段階からIFCデータを用い、構造、設備、照明の各メーカーとの連携も実現している。

 また、仕上表や求積図、詳細図でも、全てのモデルを属性(プロパティ)情報から取り出して活用する「BIMのI(Information)に該当する部分の活用にも初めて試みて、作成したモデルが各図面に展開できるメリットに、手応えを感じた」と高橋氏は語る。

 ただその一方、技術不足などで入力作図に膨大な時間を割くことになり、フルBIMに固執せずに、2Dなど他のツールを柔軟に併用することが、現実的と認識するに至った。

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