地方都市「広島」でもBIM設計をスタンダードに!広工大と大旗連合建築設計にみるBIM人材育成と実践例Archi Future 2022(2/4 ページ)

» 2023年03月22日 06時30分 公開
[加藤泰朗BUILT]

「広島の業界を挙げてBIM人材の分母を増やす」

 2年生が受講するデジタルファブリケーション実習では、レーザーカッター、3Dプリンタ、NC工作機械の3つの操作を学びながら、単にプロトタイプを制作するだけでなく、シミュレーションと融合しながら、デジタルものづくりを模索している。コンピュータのデジタルデータだけでデザイン検討するのではなく、常にリアルな造形物に出力して、それを見ながら再検討したものをデジタルへ戻すことを毎週繰り返し、リアルとデジタルの双方を融合させた設計手法を学べるようになっている。

デジタルファブリケーション実習 デジタルファブリケーション実習
3Dプリンタを使って18センチのタワーをデザインする課題。実際に風を当てどの形状が一番強いかを確認した。シミュレーションと現実の結果を対比することで、理解がより深まる仕組みだ 3Dプリンタを使って18センチのタワーをデザインする課題。実際に風を当てどの形状が一番強いかを確認した。シミュレーションと現実の結果を対比することで、理解がより深まる仕組みだ

 BIM実習では、より実践的な設計に力点を置いた構成としている。学生自らが設計した案を、2年次にはBIMソフトを使って、スキルが身に付く前の設計課題を洗い出し、もう一度設計し直すことで、より深い学びにつなげている。他にも、3Dでの図面作成など、実務で必要となるスキル習得の機会を与えている。

BIM実習 BIM実習
BIM実習で、学生がRevitのBIMモデルから作図した図面 BIM実習で、学生がRevitのBIMモデルから作図した図面

 杉田氏は、こうした実践的な講義を通じて学生のスキルアップを図る一方で、「毎年60〜70人がBIM実習を履修して社会に出ているが、スキルを生かせる就職先がまだまだ少ない」と指摘する。そのため、実務でBIMを扱う人材の母数と活躍の場を増やすことを広島県の建設業界全体で考える必要があるとし、「ヒロシマBIMゼミなどを通じて、地元企業が連携できるコミュニティーづくりが大切だ」と提言した。

講演の最後に杉田氏は、広島をBIMの街にするために何が必要かをまとめたスライドを提示。産学が新しいことにチャレンジすることが大切と説いた 講演の最後に杉田氏は、広島をBIMの街にするために何が必要かをまとめたスライドを提示。産学が新しいことにチャレンジすることが大切と説いた

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