竹中工務店は、ヴァーチャル空間のシミュレーション結果に基づき、リアル空間の空調を制御するデジタルツインのシステムを実用化した。
竹中工務店は2023年3月9日、大空間の最適な空調制御を行う新たな手法として、日本初となるバーチャルセンサーを用いたデジタルツインによる空調制御システムを開発し、「名古屋市国際展示場新第1展示館」に初適用したと明らかにした。
建物の空調を自動制御する場合、通常は建物内に取り付けたセンサーから得られる計測データと、室内環境の快適性の指標として設定した目標値を一致させる方法が多く採用されている。しかし、大空間の場合は、空間利用の障害とならないように、壁面やダクト内にセンサーを設置するケースが多いため、人が滞留する空間に向けてきめ細かな制御を行うことが難しとされてきた。
今回、開発したシステムは、シミュレーション技術によるバーチャルセンサーのデータをもとに室内環境を把握し、さらにその仮想空間上の結果により、リアル空間を制御する日本初のデジタルツイン技術。
バーチャルセンサーとは、空調機の給気温度、給気風量、還気風量、シーリングファンの循環風量、サーモカメラによる人体やブースなどの表面温度から得る実空間のリアルタイム計測データをもとに、シミュレーションで温度、風速などを推定する仮想の空間センサー。通常方式では、空調機の給気温度の実測値や壁面センサーなどで制御を行うが、新システムでは、シミュレーションのために作成したメッシュの数だけ空間センサーを生成できるため、きめ細かな空間制御が実現する。
なお、リアルタイムにシミュレーションを実行することで得られた空間の温度や風速の推定値は、中央監視装置に送られる。中央監視装置では、快適性の指標となるPMV2(Predicted Mean Vote:温度・湿度・風速・輻射・活動量・着衣量の6要素で算出する快適性指標)。との比較を計算し、現実空間の空調機器を制御する。シミュレーションは45分に1回の割合で行われ、瞬時に自動制御に生かされる。
なお、初適用した名古屋市国際展示場新第1展示館では、約73万メッシュ(約2.0×1×1.5×0.35メートルグリッド)のヴァーチャルセンサーで制御しているという。
今後は大空間のみならず、さまざまなプロジェクトで、顧客への省エネルギーとウェルビーイングを両立した建物を提供することで、脱炭素の実現やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献も目指していく。
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