清水建設は、山岳トンネル工事の発破掘削後、設計断面に対する掘削の過不足情報をプロジェクションマッピングで可視化するシステム「切羽版SP-MAPS」を開発した。
清水建設は、山岳トンネル工事の発破掘削後、設計断面に対する掘削の過不足情報をプロジェクションマッピングで可視化するシステム「切羽版SP-MAPS」を開発、同社施工の「三遠南信自動車 三遠道路2号トンネル工事(愛知県新城市)」と「東海北陸自動車道 真木トンネル工事(富山県南砺市)」に適用した。
山岳トンネル工事では、発破掘削後、設計断面の内側に残った地山を掘削し、設計断面に合わせて整形するアタリ取りを行う。その際、作業員が素掘面を目視して重機オペレーターに指示するが、掘削直後の不安定な切羽直下での作業のため、安全な手法が求められていた。
また、目視判断では重機オペレーターは掘削の過不足量の定量的な把握が難しく、余掘りが生じると、掘削土砂(ズリ)の処理量や吹付けコンクリートの打設量が増加し、施工コストが増大する。清水建設は、山岳トンネルのインバート掘削向けに開発した掘削過不足量の計測・照射技術「SP-MAPS」を切羽の掘削に転用し、同システムを開発した。
切羽版SP-MAPSは、3次元レーザースキャナ、照射用プロジェクタ、測量用プリズム、ノートPC、測量機器(トータルステーション)で構成し、機材の移動時間短縮のため、測量機器を除く機器を車両に搭載して使用する。車両を切羽近傍に配置し、ノートPCで、プリズム測量から切羽素掘面の形状データの取得、形状データの分析と掘削の過不足量で色分けしたマッピング画像の作成、照射までの一連のプロセスを約50秒で自動で行う。車両の位置を変えない場合の照射画像の更新は約30秒だ。
これにより、作業員は切羽直下に立ち入らずに済み、重機オペレーターは照射画像から掘削の過不足量を連続的に視認でき、安全性や生産効率・作業制度が高まる。また、トンネルの安定性の早期確保にも寄与する。
真木トンネル工事での実証試験では、アタリ取りの作業時間を従来手法と比べ32%短縮した。
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