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» 2021年11月01日 13時00分 公開

切羽前方の湧水リスクを事前予測する新システム、清水建設山岳トンネル工事

清水建設は、現場で日々取得される施工データを蓄積・反映した仮想空間上で切羽の地下水環境で生じる経時変化をシミュレーションし、湧水に起因するリスク情報を工事関係者にタイムリーに周知する「地山予報システム」を開発した。地山予報システムは、現場測定データの取得から最終的な作業員へのリスク情報の伝達まで一連の流れを自動化でき、現場管理者の労働負荷を減らせる。また、今後発生しうる湧水の予測を常に実施しつつ施工することで想定外の危険性を削減できる。

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 清水建設は、山岳トンネル工事の生産性向上を目的に、デジタルツインとAI技術を活用して、工事の進捗に応じて変化する切羽(きりは)の湧水量を定量的かつ高精度に予測する「地山予報システム」を開発したことを2021年9月8日に発表した。

トンネル工事期間中の全工期で発生しうる湧水の予測も可能

 湧水の発生が見込まれる山岳トンネル工事では、切羽前方で生じる湧水量を事前に予測し、この結果を踏まえて安全な施工計画を立案する。一般的に湧水量の事前予測では、湧水量の実測値や地山性状の調査データを基に切羽湧水量の経時変化をシミュレーションする手法が主に採用されているが、作業には専門技術者が2人従事した場合でも4週間程度の時間を要する。

 そこで、清水建設は、デジタルツインとAIを活用した予測シミュレーションにより、切羽湧水量の経時変化をリアルタイムに予想する地山予報システムを開発した。

「地山予報システム」の概念図 出典:清水建設プレスリリース

 地山予報システムの核となるAIによる地山特性の同定技術は、システムが常時取得する毎日の切羽湧水量に応じて、都度更新される仮想空間上の地山モデルに透水係数を表示し同定する。

 さらに、AIが同定した透水係数をベースに、地山内にある地下水の流れをシミュレーションすることで、切羽湧水量の経時変化をリアルタイムかつ高精度に予測することができる。予測結果に基づく湧水予報は、数日程度の短期予報や週間予報、トンネル工事期間中の全工期予報など、さまざまなスパンに応じられるため、精度の高い工程計画の作成と施工遅延リスクの回避にも貢献する。

 清水建設は、地山予報システムの予測精度を検証するために、同社が参画するJVが長崎県大村市で施工を進める「九州新幹線木場トンネル工事」で実測した経時的な切羽湧水データを活用して実証試験を行った結果、実測値に近似したシミュレーションが得られ、システムの有効性が判明した。

 同社は今後、地山予報システムを、地下水環境だけでなく、地山調査結果から切羽前方の地山性状を予測するシステムに発展させ、山岳トンネル工事の安全性と生産性のさらなる向上につなげていく。

「地山予報システム」の実証現場の概要 出典:清水建設プレスリリース

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