清水建設が、山岳トンネルの発破掘削の無駄を低減するシステム「ブラストマスタ」を開発・実用化した。本システムの活用により、余掘り量の把握、発破パターンの更新、削孔機への更新データ転送が自動化、効率的な発破掘削が可能となる。
清水建設は2019年7月18日、山岳トンネルの発破掘削における余堀りを低減するシステム「ブラストマスタ」を開発・実用化したことを明らかにした。ブラストマスタは、ICTを活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の要素技術。余掘り(計画掘削断面以上の余分な掘削)量を計測する車搭載型3Dスキャナと発破パターンを提案するコンピュータシステムで構成する。開発に当たっては、清水建設がシステムの発案および全体概念の検討、サンドビック社がシステムの構築を担当した。
ブラストマスタは次の手順で使用する。まず、過去の掘削経験や地山(掘削の対象となる山)の強度に基づき初期発破パターンを作成する。次に、発破後の切羽付近に3Dスキャナ搭載車両をつけ、空間形状をスキャン。すると余掘り量を把握したシステムが、余掘り量に最も影響を与える切羽外周部に位置する挿入孔の位置と角度の最適値を算出、削孔機に入力している発破パターンを自動更新する。この一連の作業の所要時間は3分だ。
余掘りが増えると搬出する土砂や吹付けコンクリートも増量するため、山岳トンネルの施工管理では余掘りの低減が常に課題となる。これまでも3Dスキャナと専用PCを活用して発破パターンを更新していたが、作業員が手動で行うパターン更新は時間がかかるため、発破のたびにパターンを更新できず、余掘りの低減には限界があった。
ブラストマスタは、余掘り量の把握から発破パターンの更新、削孔機への更新データ転送までを自動化。発破パターンの更新に要する時間を大幅に短縮できるので、発破掘削の都度システムを稼働させても施工管理には影響しない。本システムを初めて適用した新東名高速道路高取山トンネル西工事では、従来システムと比べて余掘り量が40%低減している。
清水建設は今後、ブラストマスタを新東名高速道路の萱沼トンネル工事・高松トンネル工事などで適用するほか、同社の効率的な施工提案に活用し、さらなる案件受注に結び付けたいとしている。
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