イトーキはAIを経営の中核に据える「AI経営モデル」への転換を掲げ、3つの新たなAIエージェントを軸に、顧客企業が自ら高度なオフィス投資判断と働き方のハイサイクル化を実行できる仕組みを構築する。
イトーキは2026年2月20日、東京都中央区の本社で、オフィスづくりや働き方の意思決定を支援する新ソリューション「ITOKI OFFICE AI AGENTS」の記者発表会を開いた。AIを経営の中核に据える「AI経営モデル」への転換を掲げるとともに、3種のAIエージェントを軸に、顧客企業が自ら高度なオフィス投資判断と働き方のハイサイクル化を実行できる仕組みを構築する。AIエージェントは2026年夏ごろから順次提供を開始する予定だ。
イトーキのワークプレース事業では、オフィス家具の製造/販売を「Office1.0」、オフィスの設計を含む空間ベースのソリューション提供を「Office2.0」と定義している。さらに、データを活用した働き方改革支援を「Office3.0」と位置付け、開始から2年で160社以上を支援してきた。
ITOKI OFFICE AI AGENTSは、イトーキがOffice3.0で蓄積してきたデータドリブンなオフィス構築/運用実績や年間約3万枚に及ぶ設計データ、ファシリティマネジメントの知見を基盤に開発。拠点再編をシミュレーションできる「Facility Portfolio(ファシリティポートフォリオ) AI」、オフィスの課題抽出から改善効果の予測まで行える「Workplace Insight(ワークプレースインサイト) AI」、会議室や座席などを探している人に最適な空きスペースをマッチングする「Space Matching(スペースマッチング) AI」から成る。
イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏は、「1890年創業の老舗家具メーカーがなぜAI活用を掲げるのか。理由の1つはOffice3.0のデータドリブンなオフィス運用高度化の実現。もう1つが、社内業務や経営へのAI徹底活用により自社の働き方も変革するためだ」と述べた。
湊氏は「AIは『時間を買う』もの」と定義する。従来1年を要していたタスクがAIを利用して四半期で完了すれば、利益は指数関数的に伸びるとの考えだ。約100人規模のITエンジニア体制を強みに、AIを経営の中核へ据えることで意思決定の質とスピードを向上させられると自信をみせた。
常務執行役員 ソリューション事業開発本部長 八木佳子氏は、Office3.0開始の背景に「変化が速く不確実性の高い時代において、オフィスが事業環境の変化に追随できていないという課題感があった」と振り返る。オフィスを「作ったら終わり」にはせず、データに基づきアップデートし続けるために、イトーキでは従業員のコンディションや位置情報、施設の稼働状況などを可視化するサービスに加え、収集したデータを分析するソリューションなどを展開してきた。
八木氏は「顧客支援の中で見えてきたのは、経営者がオフィス空間とその使われ方が人的資本に与える影響を科学的に理解し、競争力や成長につなげたいと考えているということだ。この関係性を解き明かすには、オフィスを多次元かつ高解像度で捉える必要がある。場所に対しては仕様や環境、人に対して状態や成果など、多様な切り口からデータを見ることが求められる。オフィスや経営の改善に活用すべきデータは急増し、分析はますます高度化/複雑化している」と語った。
イトーキの試算では、従来比でデータ量は1.7万倍、複雑さは最大2.7億倍程度に増加している。膨大なデータから投資効果を導き出し、企業の経営層や総務担当者によるオフィス改善の意思決定を迅速化するために開発したのがITOKI OFFICE AI AGENTSだ。現在はPoC(概念実証)の段階にあり、一部で活用が始まっている。
Facility Portfolio AIは、最適なオフィスの面積や席数、配置、コスト構造を算出し、拠点再編をシミュレーションするAIエージェントだ。Wi-Fiデータや会議システム、スケジュール情報など既存の社内データを統合し、100拠点規模でも利用状況を常時一元的に把握、分析できる。
分析の結果、利用率の変化や偏りなどの兆候を検知した際にはアラートで通知する。拠点の面積配分や必要座席数、入居組織の最適な組み合わせをシミュレーションし、集約/分散や再編の選択肢を具体的な数値とともに提示。ファシリティ戦略の検討時間を大幅に短縮し、経営判断の迅速化を支援する。
八木氏は「担当者はアラートに対し、稼働率や用途、ピークの時間、利用者の部署など多面的な切り口で状況を深堀りできる。具体的な改善内容についてはAIとチャットで対話しながらシミュレーションが可能だ」と説明。従来は専門コンサルタントが提案していたオフィス空間のリスタッキング(再編)についても、AIを活用したシミュレーションにより顧客自身が主体的に検討できるようになるという。
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