2028年にCO2排出ゼロを掲げるパナソニック新潟工場、LED製品開発のマザー拠点を視察LED(2/2 ページ)

» 2023年03月10日 06時11分 公開
[川本鉄馬BUILT]
前のページへ 1|2       

照明設計のノウハウが光る「タスク・アンビエント照明」

 新潟工場のオフィスエリアでは、照明に関する多彩な省エネ施策を検証中だ。働き方が多様化するこれからのオフィスに求められるのは、単なる省エネではなく、働く人に配慮した照明。パナソニックでは、環境を考慮した設計を「空間省エネ」、人に寄り添う設計を「空間快適」と分類している。

これからのオフィスには、「空間省エネ」と「空間快適」が求められる これからのオフィスには、「空間省エネ」と「空間快適」が求められる

 照明設計で難しいのは、照明によって人がどのように感じ、集中やリラックスするのかをデータ化できない点にある。照明の効果は、数値にしにくく写真や言葉でも伝わりにくい。そこで、新潟工場では照明効果の実証に向けて、働く場に“比較×体感”ができるスペースを作った。工場内に検証の場を6エリア設け、空間省エネと空間快適を比較して体感できるようにしている。

オフィスの照明環境を検証するため、6つのエリアを設定 オフィスの照明環境を検証するため、6つのエリアを設定
オフィス改革エリア オフィス改革エリア
オフィス×カフェエリア オフィス×カフェエリア

 個々のエリアでは、それぞれのテーマを設定して検証している。そのなかで重要な役割を果たすのが、タスク・アンビエント照明だ。タスク・アンビエント照明とは、業務する「作業面(タスク)」と「周辺(アンビエント)」で明るさを変える照明手法だ。手元では作業に必要な明るさを確保し、周辺では安全や快適性に必要なだけの明るさを提供することで、従来の均一照明に比べ、20〜60%の省エネにつながる。

必要な明るさを確保しつつ省エネ効果もある「タスク・アンビエント照明」 必要な明るさを確保しつつ省エネ効果もある「タスク・アンビエント照明」

明るさの感覚を表す独自指標の「Feu」で照明設計

 タスク・アンビエント照明自体は、かなり前からあった概念だが、近年、照明がLED化されるとともに進化してきた。LED化の浸透によって、コンパクトな照明機器での照射方法、照射量、照射範囲などが自由に設定できるようになり、必要な場所に必要な明かりを与える空間設計が可能になった。

必要な明るさを確保しつつ省エネ効果もある「タスク・アンビエント照明」 新潟工場で照明改善プランニングを担当しているパナソニック エレクトリックワークス社 中央エンジニアリング部 照明ソフト開発課 不破正人氏

 タスク・アンビエント照明は、これまでの照明と比較すると周辺部をあえて暗くする照明手法。そのため、「オフィスが暗く感じるのではないか」という不安が残るが、壁面や天井面を適度な照度に保てば、以前とそう変わらない印象が保てる。

 パナソニック エレクトリックワークス社では、照度の数値だけでは分かりにくい、人が空間に対して感じる明るさを表す「Feu(フー)」という独自指標を用いて照明設計している。Feuによって、机やテーブルの天板など作業面の明るさ確保と、暗がりの不安を払拭(ふっしょく)しつつ、省エネ照明を実現している。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.