新潟工場のオフィスエリアでは、照明に関する多彩な省エネ施策を検証中だ。働き方が多様化するこれからのオフィスに求められるのは、単なる省エネではなく、働く人に配慮した照明。パナソニックでは、環境を考慮した設計を「空間省エネ」、人に寄り添う設計を「空間快適」と分類している。
照明設計で難しいのは、照明によって人がどのように感じ、集中やリラックスするのかをデータ化できない点にある。照明の効果は、数値にしにくく写真や言葉でも伝わりにくい。そこで、新潟工場では照明効果の実証に向けて、働く場に“比較×体感”ができるスペースを作った。工場内に検証の場を6エリア設け、空間省エネと空間快適を比較して体感できるようにしている。
個々のエリアでは、それぞれのテーマを設定して検証している。そのなかで重要な役割を果たすのが、タスク・アンビエント照明だ。タスク・アンビエント照明とは、業務する「作業面(タスク)」と「周辺(アンビエント)」で明るさを変える照明手法だ。手元では作業に必要な明るさを確保し、周辺では安全や快適性に必要なだけの明るさを提供することで、従来の均一照明に比べ、20〜60%の省エネにつながる。
タスク・アンビエント照明自体は、かなり前からあった概念だが、近年、照明がLED化されるとともに進化してきた。LED化の浸透によって、コンパクトな照明機器での照射方法、照射量、照射範囲などが自由に設定できるようになり、必要な場所に必要な明かりを与える空間設計が可能になった。
タスク・アンビエント照明は、これまでの照明と比較すると周辺部をあえて暗くする照明手法。そのため、「オフィスが暗く感じるのではないか」という不安が残るが、壁面や天井面を適度な照度に保てば、以前とそう変わらない印象が保てる。
パナソニック エレクトリックワークス社では、照度の数値だけでは分かりにくい、人が空間に対して感じる明るさを表す「Feu(フー)」という独自指標を用いて照明設計している。Feuによって、机やテーブルの天板など作業面の明るさ確保と、暗がりの不安を払拭(ふっしょく)しつつ、省エネ照明を実現している。
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