全国の地方自治体で道路インフラの老朽化が深刻化し、インフラメンテナンスの重要性は増している。しかし、多くの地方自治体でインフラの維持管理は2次元の図面をベースにしているため、多くの課題を抱えている。建設コンサルタントの日本インシークはデジタル技術でこうした課題解決を促すサービス展開を本格化している。
建設コンサルタントの日本インシークは、「建設技術展2022近畿」(会期:2022年11月9〜10日、インテックス大阪)で、「次世代インフラマネジメント」をコンセプトに深刻化する全国の道路インフラの老朽化対策に3Dデータを活用して支援するサービスやツールを展示した。
地方自治体の道路インフラのメンテナンスは調査、計画、設計、維持管理の全ての段階で2次元の図面をベースにやりとりするケースが多く、インフラ構造物がどこにあるか分かりづらかったり、メンテナンス履歴などの確認に時間がかかったりしている。多くのインフラが更新時期を迎える中で、調査、計画、設計、維持管理の各段階のデータを3D化して誰もが扱え、業務を効率化する環境整備は必要不可欠となっている。
日本インシークではまず、こうした課題を抱える自治体向けのサービスとして高品質な路面性伏調査を提供している。MMS(モービルマッピングシステム)や全周囲カメラを搭載した車両を用いて、通常の調査対象となる道路のひび割れやわだち掘れなどの確認はもちろん、道路周辺の点群データを取得して道路環境の3Dデータを収集している。
来場者の説明にあたった説明員は「一般的な測量などの業務で、従来の成果物とともに3Dデータを納品する付加サービスを提供している。3Dデータの使いやすさに触れてもらうことで、維持管理分野のDXを進めていきたい」と語る。
3Dデータは活用できれば便利だが、ただ取得しただけでは道路管理者はうまく活用することができない。データの整理や活用しやすい環境の整備は必要不可欠となる。日本インシークのブースではそうした課題に応える主に二つのサービスを紹介した。
1つはベンチャー企業のIntelligent Styleが開発した点群ブラウザソフトウェア「3D Point Studio」だ。点群データは膨大な容量となるため、目的とするエリア周辺のデータを探す作業に時間がかかったり、取得したデータがいつのものなのかが分からなくなったりする。同ソフトでは読み込んだデータに計測日時や計測機器、計測位置といった情報を付与することができ、必要な情報だけを抜き出して活用することが可能となる。日本インシークは販売代理店として自社で活用してきたノウハウを基にサービスの普及に努めている。
もう1つは誰もが扱いやすい3Dデータの活用環境を提供する自社開発のクラウドサービス「RID(Road Infrastructure Database)」だ。取得した点群データをクラウドサーバに保管し、誰もが扱えるオープンデータとして活用できるようにする。公開範囲を自身で設定できるため、道路管理者は利用者のニーズに合わせたデータ提供を可能にできる。先ほどの説明員は「工事発注の時に分かりやすく現場状況を伝えることができるなど、可能性は無限に広がる」と説明する。
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