東急建設は、AR関連技術を製造・販売するCellidに出資した。背景には、Cellidの持つARグラスのハードウェア技術とVisual SLAMのソフトウェア技術に、東急建設のBIM/CIMといった建設デジタル技術を融合させることで、建設DXを加速させ、新たなソリューションを共同開発することも見据えている。
東急建設は、ベンチャー投資の加速を目的にした総額50億円となる二人組合形式のコーポレートベンチャーキャピタルファンド(CVC)「TOKYU-CONST GB Innovation Fund L.P.(TCIF)」を、独立系ベンチャーキャピタル大手のグローバル・ブレインと共同で2022年2月に設立し、その一環でAR関連技術を製造/販売するCellidに出資したと2022年12月16日に公表した。
二人組合形式とは、事業会社とベンチャーキャピタル(VC)の2社でCVCファンドを共同設立する形態で、事業会社が出資を行いVCが運営を行う。そのため、ベンチャー投資に関連する一連の手続きをVCに委託することでノウハウの不足を補完し、スピード感を持った投資が実現する。
今回の投資先となったCellidは、ARグラス向けに世界最大級の広視野角を持つシースルー・ディスプレイと超小型プロジェクターを組み合わせたディスプレイモジュールと、高精度の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」の双方を展開するベンチャー企業。
大手調査会社の予測によれば、ARグラスの市場は、2027年に5000万台/547億ドルに成長することが見込まれているという。ゲームやエンタメ分野を中心に早期に浸透したVRとは異なり、ARは初期のエコシステム形成に時間をかけた後、急激に成長し、スマートフォンなどのように日常生活に深く浸透することが期待されている。
Cellidの強みは、軽くて高性能なARグラスを実現する高度なハードウェア技術だけではなく、ARグラスのアプリケーションとして欠かせない、Visual SLAMのソフトウェアを自社開発し、自らARソリューションを提供できることにある。こうした市場優位性を生かし、ハードウェアとソフトウェアの両面でのAR市場の成長を推進することを目指している。
東急建設が出資した背景としては、2030年までの長期経営計画で、「デジタル技術」を競争優位の源泉に掲げ、建設事業のデジタルシフトと新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいることがある。出資を機に、BIM/CIMをはじめとするデジタル技術とVisual SLAMを掛け合わせ、建設事業のDXを推進するとともに、DXソリューションを共同開発し、販売することも見据えている。
既に2022年度内には、Visual SLAMを活用したDXソリューションのPoC(概念実証)を東急建設の建設現場でスタートすることも検討している。
今後も、東急建設は国内外の有望なベンチャー企業への出資を通じ、建設業の枠を超えた新たな活動に取り組んでいくと表明している。
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