クラウド録画サービスを提供するセーフィーは、クラウドカメラ「Safie」の最新モデル「Safie One」を2022年8月から販売展開している。場所や時間に縛られず映像を確認できるSafieのクラウドカメラは、従来の防犯用のみならず、遠隔での現場管理や接客業務の質向上など「建設現場」の課題解決に貢献してきたが、新製品は最新のエッジAIを搭載し、人検知やラインカウント、エリアカウントなど、かつてない高機能を実現する製品として注目されている。本稿ではセーフィーの事業戦略とSafie Oneについて解説していく。
2014年10月設立のセーフィーは、クラウド録画型映像プラットフォーム「Safie」の開発・運営を基幹事業として生まれたスタートアップ企業。事業の中心となっているのは、街中に設置したさまざまなカメラから映像をデータ化してクラウド上に集め、そこから新しいアプリケーションを生み出していくというもので、SONYやキヤノン、NTT東日本、三井不動産などの大手企業各社との資本・業務提携を実現。各社とチームを組んで、新たなクラウドモニタリング・録画サービス市場の開拓を進めていった。
いまやクラウド録画サービス市場で5割近いシェアを獲得し、代表取締役社長CEO 佐渡島隆平氏も、「Forbes JAPANが選ぶ起業家ランキング2021」で第一位を受賞。2021年9月には、東証のマザーズ市場にも新規上場した。
セーフィー成長の原動力は技術開発力にあり、その特徴は以下の4つのポイントに集約される。
1.クラウドドリブンなカメラOS:カメラに入れるファームウェアも独自開発してメーカーに配布し、豊富なB2B向けカメララインアップがそろう。また、デバイス・映像データもクラウドからも制御できる。
2.強固なセキュリティ:暗号化などによるセキュアなネットワーク通信経路設計を実現。
3.誰もが使える高品質なUI・UX:置くだけ簡単のサービスUX設計。しかも高画質・高圧縮の映像品質を提供。
4.拡張性の高いプラットフォーム:AI開発のポイントとなる動画データプラットフォームを通じ、あらゆるサービスと連携できるAPIを提供。
そして、これらとともに創業当初から同社が取組んできたのが、新製品の核となるエッジAI※である。
※エッジAI=さまざまな端末(今回はクラウドカメラ)自体に搭載するAI
セーフィーの事業コンセプトは、「誰もが簡単に使える賢くなるカメラを作る」ことであり、創業8年目にして完成したのがSafie One。エッジAIの搭載により、実現された「賢くなるカメラ」である。エッジAIが映像をリアルタイムで自動処理し、クラウドシステムと一緒になることで、新たなアプリケーションを追加できるようになる。アプリが開発されるたび、エッジAIに書き加えることで、Safie Oneは賢くなる=多機能になっていく。そのため、Safie Oneとクラウドシステムは、「映像から未来をつくる」に基づく、さまざまな業界の課題解決となる多様なアプリを備えた新サービスを創出する可能性を持っている。
セーフィーでは、Safie Oneにインストールできるアプリを「AI-APP」と呼び、社外でも開発が行われることを期待している。もちろん当初は、自らのアプリ開発を進めており、既に実績のある小売・飲食業界を対象としている。例えば、実店舗では難しいページビューやユニークユーザー、コンバージョンレートなどのデータ収集のためのアプリ、こうしたデータを自動的にカウントするといった機能を店舗カメラに持たせていく計画だ。小売・飲食業界の課題解決に取り組みながら、徐々にAI-APPのラインアップを拡大。いずれは全てのインダストリーへ向けて、エッジAIの世界を社会実装していこうと考えている。
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