津工場は、1800人の従業員が働く配線器具のマザー工場で、約1万品番の商品を生産しているだけでなく、「新商品の開発」「製造革新(工法、設備、IoTの開発)」「技能者の育成」といった取り組みを行っており、蓄積したノウハウや技術は海外の製造拠点に継承している。
パナソニック EW社の井田氏は、「津工場では、マーケットニーズ・設計部や商品設計部、工法設計、設備・金型設計部、工程・管理設計部といった関連部門が商品開発の初期段階から緊密に連携することで、商品の品質向上と開発期間の短縮を図る“五設一体思想”を採用している。さらに、金型、部品づくり、組み立てを一貫して内製化することで、高品質なものづくりを実現した。商品の生産工程では、従来の製造プロセスに、“設備稼働監視システム”や金型保全システムといっつたIoTシステムを組み込むことで、製造管理サイクルの高速化を達成している」と語った。
設備稼働監視システムは、設備の稼働状態を見える化し、保存された稼働データを分析して、作業を改善できる。金型保全システムは、金型の保全作業で蓄積されたノウハウを集積し、集められたノウハウを関係者間で共有することにより、保全作業の効率化を果たせる。
津工場の人材育成では「津工場 コア人材育成プログラム」を行う。津工場 コア人材育成プログラムは、入社1年目の社員を対象としたカリキュラムで、金型技能士コースと設備技能士コースを用意しており、事業ニーズに沿った技能人材を育てている。
「ちなみに、海外の製造拠点で働く従業員に対して、工場の立ち上げ業務に関するマニュアルの動画と資料を配布した上で、津工場では、ベテランの授業員が、ネットワークカメラやリアルタイム翻訳ツール、デスクトップPC用の落書きツールを活用し、インターネットを介して、立ち上げ業務をレクチャーしている」(井田氏)。
また、津工場で勤務する全従業員は、安全体感機とVR体感機を用いて、危険な作業の疑似体験を実施し、安全意識を高めている。
環境配慮に関して、省エネ設備やソーラーカーポートなどの設置により、2030年までにCO2排出量実質ゼロ化を目標として掲げている他、工場内の伐採木材により作成した腐葉土でカブトムシを飼育し、近隣の海外清掃で出たプラスチックごみを使ってペンダントも製作している。
BCP対策については、2020年5月に受電設備の高さを地盤面よりも5.3メートル高くしただけでなく、1階で行っていた金属加工工程のうち重要な工程を3階で実施するようにし、重要な金型も3階で保存するようにして、津波による浸水の対策を講じた。
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