360度撮影で日本全域の建築空間を3Dデータ化、Matterportの市場戦略と最新Pro3など製品群デジタルツイン(2/4 ページ)

» 2022年10月11日 06時11分 公開

アジア太平洋の全域で、建築空間のキャプチャーと3Dデータ化

 Matterportのビジョンでは、アジア太平洋エリア全域の建築空間のキャプチャーを掲げており、2022年以降、地域全体で建築空間のキャプチャー&データ化を進めていく。そのために、建築物を最適化するためのデータ分析に関わるアプリケーションなどの提供にも注力し、特に住宅不動産、商業用不動産、環境、建設、製造の分野へ重点的に展開していく計画だ。

 前述の通り、Matterportの日本法人設立は2022年4月だが、実は日本市場への参入は2017年のことで、既に5年の実績がある。事実、日本市場における最初の取り組みは、市場参入直後の2018年。不動産住宅サイトのリクルートSUUMOやハウスメーカーのアイフルホームに注文住宅のバーチャル内見用技術として採用されたのが出発点となった。以降、Matterportは多様な業界の企業に導入され、日本でのビジネス規模は5年で4倍以上に拡大した。

 ──では、当時新規参入したばかりだったMatterportが、なぜこれほどの急成長を遂げたのか。その一番の原動力は、Matterportが提供する技術そのものの優位性にあった。

Matterportの成長を支える技術

 Matterportの技術の優位性は、360度カメラで生成されるデジタルツインの3次元データが持つ機能にある。代表的な例が「ウォークスルー」と「ドールハウス」だ。

 ウォークスルーと言えば、日本ではVRを用いた手法が建築業界で普及しているが、実はこの従来型VRは360度画像を画面遷移しているだけで、VR空間内の位置関係などは分かりにくい。しかし、Matterportのウォークスルーは奥行きのある空間を歩くようで、リアルな没入感を体感できる。

Matterportによる4Kウォークスルー画像 出典:マーターポート『日本法人設立』事業戦略 記者発表会資料

 一方のドールハウスは、リアルな3Dデジタル建築模型とでもいうべき機能。建築物の内部を含め、全体を立体かつ俯瞰で、あらゆる角度から自由に閲覧できる。また、縦方向や水平方向で好きな位置で切断し、階層別または平面的に見ることも可能だ。

住宅を俯瞰で見渡せるドールハウス 出典:マーターポート『日本法人設立』事業戦略 記者発表会資料

 もう1つの優位性として、Matterportが扱いやすく、誰でも簡単に建築空間をキャプチャーして、高品質なデジタルツインのデータが素早く生成される点がある。

 国内市場の例をみると、全国支社のモデルルームを各地の営業担当がMatterportで撮影し、VRモデルルーム作りを内製化したデベロッパー、図面の無い既存建物の修繕改修工事にMatterportを採用したゼネコンなどがユースケースとしてある。前者は現場社員の手間やコストを抑え、モデルーム閉鎖中もウォークスルーとドールハウスの活用で商談の活性化に成功し、後者は現地調査の手間と時間、改修工事立案までの工数を大幅に削減。竣工後もデジタルツインのデータを顧客企業や関係者の確認用、竣工記録用VRコンテンツとして幅広く活用しているという。

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