360度撮影で日本全域の建築空間を3Dデータ化、Matterportの市場戦略と最新Pro3など製品群建築デジタルツイン(1/4 ページ)

建築物のデジタルツインなど空間データ利活用分野のリーディングカンパニーである米Matterportは2022年4月、日本法人となるマーターポートを設立した。2017年の日本上陸以来、Matterportはあらゆる建物空間のデジタルツインを誰でも容易に作成できるソフトウェアを提供し、主に建築・建設分野で急成長してきた。日本法人設立を機に販売支援体制の確立を推進し、導入支援とサポート体制を拡充させ、幅広い分野へ展開していくことを目指している。

» 2022年10月11日 06時11分 公開

 Matterportは、同名の米国企業が提供する360度3D-VR撮影&3Dモデリングのシステム&サービスである。Matterportのサービスを使えば、必要に応じて選べるさまざまなカメラで高精度な360度の3D映像を手軽に撮影でき、その空間データからクラウド上で高精度かつ高品質な3Dモデルをスピーディーに生成。ユーザーは高品質なデジタルツインを素早く入手して、さまざまな用途で活用可能になる。

 360度カメラによる3D化の技術を基盤に、2011年に設立したMatterportは、以後着実な成長を続け、現在では空間データのリーディング企業として世界177カ国に展開。そのユーザー数は50万人を超え、同社がデジタルツイン化した建物は全世界に670万棟、床面積にして18億平方メートルに達しているとのことだ。

 Matterportの成長ぶりは現在も変わらず、むしろ近年はさらに加速している。NASDAQへ上場を遂げた2021年、Matterportのサブスクリプション数は前年度比98%増を達成し、サブスクリプション収益は前年度比47%増。売上高は141%の成長を実現した。2022年はさらなる売上数字を予定しており、多様な新製品もリリースしている。スマートフォンによる安定した360度空間撮影を可能にする自動回転雲台「Matterport Axis」やAndroid端末対応のキャプチャーアプリをローンチしたほか、2022年11月には3D LiDARカメラを搭載した「Matterport Pro3」を国内でも正式発売する。

 また、米Enviewを買収し、空間データの分析とその理解に関わる機能を強化し、AWS MarketplaceでのMatterportプラットフォーム提供も開始するなど、この1年の展開は同社が新たな成長段階に踏み出した観がある。

日本法人設立発表会でのマーターポート 執行役員 社長 蕭敬和氏

新たなビジネスチャンス創出を目指す事業戦略

 Matterportが持つ3D空間データセットは、いまや世界最大規模となり、Meta(旧facebook)との戦略的パートナーシップの成果やEview買収による空間データの分析と理解の深化により、新たなビジネスチャンス創出の取り組みも着実に進んでいる。

 現在は、Meta AI Researchとの協力による次代の巨大テクノロジープラットフォーム構築も進行中で、既にAIモデルをトレーニングして新たなインテリジェント・システムの構築も始まった。これはビルやホテル、住宅、レストランなどあらゆる空間内で自律動作して対話も可能なロボットや個人のデジタルシステム的な存在とされ、その研究成果はMatterportのMarketplaceからアプリケーションの1つとして提供される予定だ。

 一方、Matterportが2022年買収したEnviewは、3D空間データ向けスケーラブルAIの先駆的企業で、3D専用に開発された革新的AIと、国家レベルの複雑なワークフローを自動化できるエンタープライズ・プラットフォームを組み合わせたコアテクノロジーを持っている。コアテクノロジーとは、物体認識や特徴抽出、変化検出、2D/3Dの計測や属性など、さまざまな3D空間演算を実現する強力な空間データ分析技術であり、Matterportの戦略にフィットし、Matterportプラットフォームを補完するものとなる。今回の買収により、Matterportでは、建物検査の自動化やAIによる空間計画、建物資産活用の検討、完全なデジタル化環境での運用効率など、より高度な建物分析と3次元でのデータ活用が可能になったとしている。

Matterportのデジタルツイン プラットフォームの構成とビジネスモデル 出典:マーターポート『日本法人設立』事業戦略 記者発表会資料

 Matterportの世界戦略において、アジア太平洋地域は極めて重要な地域と位置付けられてきた。特にこの一年、同地域で成長を遂げ、今後も最大の伸びしろがある市場として重点的に投資していく。

 そして、この成長市場で最も期待されているのが日本市場だ。日本法人設立もその期待感の現れといえる。

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