清水建設は急傾斜でもコンクリ形状を保つベルトコンベヤーを開発、全体工期を10%短縮導入事例

清水建設は、ダム建設工事の生産性向上を目的に、高所に配置したバッチャープラントで製造されたダムコンクリートを、材料分離を防ぎつつ低所の打設場所へ最短ルートで運べる密閉・吊り下げ構造のベルトコンベヤー「SCプレミアムベルコン」を開発した。SCプレミアムベルコンは古河産機システムズの協力を得て開発したもの。特徴は、袋状に丸めた搬送ベルトの中にコンクリートを包み込んで運搬する点で、急傾斜の法面沿いに設置した場合でも、運搬物の形状が崩れず、コンクリートの材料分離を防げる。

» 2022年10月04日 09時00分 公開
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 清水建設は、ダム建設工事の生産性向上を目的に、高所に配置したバッチャープラントで製造されたダムコンクリートを、材料分離を防ぎつつ低所の打設場所へ最短ルートで運べる密閉・吊り下げ構造のベルトコンベヤー「SCプレミアムベルコン」を開発したことを2022年9月20日に発表した。

コンクリート打設工程の期間を約4カ月に短縮

 ダム建設工事では、全体工期の過半を占める堤体コンクリート打設の効率化が工事全体の生産性向上で重要とされている。堤体コンクリートの打設は、ダムコンクリートの製造、運搬、打ち込みを繰り返す連続作業で、打設効率を高める上では、運搬能力の向上は必須な要素となっている。

 一方、これまでのダムコンクリート運搬方法では、ダムサイトの法面に設置したベルトコンベヤーを利用してコンクリートを連続的に搬送する手法が利用されているが、通常の平ベルトコンベヤーは、搬送傾斜角度を大きくすると、比重の大きい粗骨材などが運搬中に滑落するリスクが高まる。

 このため、急傾斜の法面にベルトコンベヤーを適用する場合には、傾斜角度を緩和するための切り返し部を設けなければならず、切り返し部が運搬効率の低下を招いている。そこで、清水建設は、急傾斜の法面でも直線的に配置でき、運搬効率を最大化するベルトコンベヤー設備として、SCプレミアムベルコンを開発した。

 SCプレミアムベルコンは、袋状ベルトコンベヤー、コンクリート供給用ベルトフィーダ、コンベヤー用プーリー・ローラー・モーターで構成されるダムコンクリート運搬設備。

袋状ベルトを利用した搬送機構のイメージ 出典:清水建設プレスリリース

 袋状ベルトコンベヤーは、吊り下げ構造の搬送システムで、上部のローラーにベルトの両端を挟み込むことで袋状の搬送スペースを形成し、搬送ラインにコンクリートを供給するベルトフィーダとの合流部では、上部が開口する仕組みになっている。

 運搬能力は、1時間あたり200立方メートルで、固定式ケーブルクレーンを用いたコンクリート運搬と比較して約2倍の大容量運搬が可能。加えて、堤体積100万立方メートル級の大型ダム工事で適用すると、コンクリート打設工程の期間は約4カ月で、全体工期を約10%短縮できる見込みだ。

実験ヤード内に設置した実証設備 出典:清水建設プレスリリース

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