狭い場所でも使えるVOCs汚染地下水向けの新たな拡散防止技術、大成建設汚染地下水対策

大成建設は、地盤に設置した注入管から浄化材を連続的に供給し、浄化菌を活性化させることで揮発性有機化合物(VOCs)に汚染された地下水の拡散を防止する技術「T-SoilReme-Biobarrier」を開発した。今後は、塩素化エチレン類で汚染され、敷地外への拡散が懸念されるようなエリアで、狭い敷地境界など地下水汚染サイトを対象に、T-SoilReme-Biobarrierを適用していく。

» 2022年09月22日 09時00分 公開
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 大成建設は、地盤に設置した注入管から浄化材を連続的に供給し、浄化菌を活性化させることで揮発性有機化合物(VOCs)に汚染された地下水の拡散を防止する技術「T-SoilReme-Biobarrier」を開発したことを2022年9月14日に発表した。

注入管は1本あたり(10メートルの場合)約30〜60分で地盤に装着可能

 現在、国内では、電子部品や金属部品などの洗浄に広く使われてきた塩素化エチレン類(トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなど)が環境規制物質に指定されており、こういった汚染物質で地下水が汚染されている場合には、浄化あるいは拡散防止対策を行わなければならない。

 一方、汚染地下水の拡散防止対策では、これまで地下水を地上にくみ上げて水処理施設で汚染物質を除去する技術「揚水バリア」が多く用いられてきた。しかし、従来の技術では、継続して汚染地下水を揚水し浄化処理を行う必要があり、処理設備の設置スペースを確保することが困難な狭い敷地では適用できないという問題もあった。

 そこで、大成建設は、汚染地下水が拡散する範囲に設置した注入管から汚染物質を分解する溶液状の浄化材を供給して地中の浄化菌を活性化させることで、浄化領域(バリアゾーン)を形成させ、汚染地下水の拡散を防止する技術のT-SoilReme-Biobarrierを開発した。

 T-SoilReme-Biobarrierは、狭い敷地境界でもコンパクトな設備を用いて注入管から少量の浄化材を供給し、汚染地下水の拡散防止を実現するため、揚水バリアと比較してコストや管理の手間などが減らせる。

 具体的には、樹脂製の注入管を鋼管内に収納し、小型の自走式バイブロドリルマシンを用いて、注入管1本あたり(10メートルの場合)約30〜60分で地盤に取り付けられる。

溶液状の浄化材を用いる「T-SoilReme-Biobarrier」の概念図 出典:大成建設プレスリリース

 さらに、浄化菌を短時間で活性化させる浄化材「TM-BioQuick※1」を含む菌液を注入管から連続的あるいは断続的に供給し、バリアゾーンで汚染物質の分解を活性化させ、浄化を促進する他、地中の浄化菌が少ない場合には、浄化初期に大成建設保有の浄化菌「デハロコッコイデス属細菌UCH007株※2」を含む菌液を注入管から供給することも可能。

※1 TM-BioQuick:有用菌を迅速に増やす効果があるホップ成分を含むビール酵母エキスを配合した液状の即効性浄化材。可溶性で帯水層に容易に注入することが可能であり、地下水中のpHを中性域に保つ成分も配合しているため、浄化菌の増殖を短時間で促進する。

※2 デハロコッコイデス属細菌UCH007株:水素を電子供与体として塩素化エチレン類の塩素と水素を置換することにより増殖可能な特殊な嫌気性細菌で、国が定める指針「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」の適合確認を受けている安全な細菌。

注入管の設置状況 出典:大成建設プレスリリース

 加えて、今回の技術では、バリアゾーンの地盤特性に応じて注入管の設置間隔を調整し、高濃度の浄化材を少量ずつ供給することで、浄化材をバリアゾーン全体に満遍なく浸透させられる。また、注入管から供給する浄化材の液量を減らせるため、大型の送液ポンプや貯留タンクを不要とし、地上設備をコンパクト化しやすくなり、狭い敷地境界周辺で拡散防止技術を適用することを達成する。

狭い場所での浄化設備の設置状況 出典:大成建設プレスリリース

 既に、大成建設では、汚染地盤での実証試験によりT-SoilReme-Biobarrierの性能を確認している。実験では、塩素化エチレン類で汚染された実際の地盤に注入管を約0.5メートルピッチで3本配置し、注入管から0.4メートル下流の観測井戸でモニタリングを行った。

 その結果、デハロコッコイデス属細菌を注入後40日経過時点で菌数が約1万倍増加して地盤中にバリアゾーンが形成され、浄化材注入から90日目以降には塩素化エチレン類濃度が基準値以下まで低下したことを確かめた。

実証試験における地下水中の塩素化エチレン類濃度と浄化菌数の推移 出典:大成建設プレスリリース

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