高濃度のクロロエチレン類を無害なエチレンまで原位置浄化する新技術を開発汚染土壌・地下水浄化技術

竹中工務店と名古屋工業大学は、国内の土壌・地下水汚染の多くを占めるクロロエチレン類を浄化する新技術を開発した。

» 2019年11月30日 07時00分 公開
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 竹中工務店と名古屋工業大学は2019年10月29日、高濃度のクロロエチレン類を無害なエチレンまで原位置浄化※1できる脱塩素化微生物(デハロコッコイデス属細菌)を分離・培養して、汚染土壌・地下水を効率的に浄化する技術を開発した。

国内の土壌・地下水汚染の全対策件数の約55%は揮発性有機化合物

 土壌環境センターの調査結果によれば土壌・地下水を汚染する物質の揮発性有機化合物は、国内の土壌・地下水汚染の全対策件数の約55%を占めている。そのなかでも、クロロエチレン類であるテトラクロロエチレンとトリクロロエチレンおよびその分解生成物による汚染が最も多いケースで、今回の開発はこの問題への有効策になると期待されている。

開発技術(バイオオーグメンテーション)の概要図 出典:竹中工務店

 微生物の働きを利用して汚染土壌・地下水を浄化するバイオレメディエーション(バイオ浄化法)には、従来手法のバイオスティミュレーション※2と新手法のバイオオーグメンテーション※3がある。

 バイオスティミュレーションは、高濃度汚染の用地や土着の分解微生物が存在しない用地では適用が難しく、また浄化に年単位の時間が必要だった。そのため、費用や環境負荷の高い掘削除去を選択するか、あるいは土地の有効活用が進まないという課題があった。 

 このたび開発した汚染土壌・地下水浄化技術は、デハロコッコイデス属細菌を栄養剤とともに注入井戸から汚染土壌・地下水へ直接注ぎ込むことで、高濃度のクロロエチレン類を分解・無害化するバイオオーグメンテーション。

デハロコッコイデス属細菌(左)とクロロエチレン類に対する同微生物を用いた脱塩素化のグラフ(右) 出典:竹中工務店

 デハロコッコイデス属細菌は名古屋工業大学が分離に成功したもので、1リットルあたり300ミリ(地下水環境基準の3万倍)を超えるトリクロロエチレンを25日で脱塩素化するほどの高分解能力、高濃度耐性を有す。同技術は、掘削除去と比較してコストを50%以下に削減、バイオスティミュレーションと比較して浄化期間を3分の2以下に短縮するという。

 今後、竹中工務店はグループ会社である竹中土木とともに、土壌・地下水汚染が原因で土地の有効活用が進んでいない用地などを中心に、汚染濃度により従来手法と同技術を使い分け適用を進める。また、最適な土壌調査・対策計画、その後の対策工事からモニタリング、最適工事を提案する「ジオクリーン・ワークス」の一環として、顧客の土地利用に貢献していく。

 なお、竹中工務店は、この微生物を用いた浄化事業計画について、平成17年3月に経済産業省と環境省が策定した「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」への適合確認を名古屋工業大学と連名で取得している。

※1 汚染された土壌・地下水を、掘削を行わずにその場で浄化すること

※2 バイオレメディエーションのうち、栄養剤等を加えて汚染サイトに生息している微生物を活性化させて浄化する技術

※3 バイオレメディエーションのうち、あらかじめ外部で培養した微生物を栄養剤等とともに土壌・地下水中に投入することにより浄化する技術

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