IoTボルトを用いた「長大吊橋モニタリングシステム」の運用開始、IHI導入事例

現在、国内では社会インフラの老朽化と労働人口の減少が同時に進行し、インフラを効率的に維持管理する手法の確立が喫緊の課題となっている。一方、橋梁(きょうりょう)をはじめとする社会インフラは、モニタリングを通じた適切な維持管理を行うことで、耐用年数を延ばせる。そこで、IHIとIHIインフラシステムは、NejiLawが開発したマルチセンシングIoTデバイス「smartNeji」を用いた「長大吊橋モニタリングシステム」を開発した。

» 2022年08月19日 09時00分 公開
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 IHIとIHIインフラシステムは、NejiLawが開発したマルチセンシングIoTデバイス「smartNeji」を用いた「長大吊橋モニタリングシステム」の運用を開始したことを2022年8月10日に発表した。

地震による橋の挙動と損傷度合いを即座に推定

 smartNejiは,NejiLawの緩まないネジ「L/R neji※1」に締付力や加速度を検知する各種センサーと通信モジュールを搭載したマルチセンシングIoTデバイス(ボルト)。

※1 L/R neji:ボルトに右ネジと左ネジの両方を合わせたような特殊な溝を付け、ここに右回りナットと左回りナットをかけることで絶対に緩むことがない構造を実現。smartNejiもこのL/R nejiと同じ構造を採用している。

 今回運用を開始したシステムに関して、山口県下関市と北九州市門司区を結ぶ「関門橋」で、床組み固定装置に使用されていたボルトをsmartNejiに差し替え、ボルトの締付力をモニタリングする。

床組み固定装置(青枠)と「smartNeji」(矢印)、smartNejiからのデータを受信する設備(右) 出典:IHIプレスリリース

 床組み固定装置は、摩擦力を利用して地震時における吊橋の挙動を制御し、吊橋全体の損傷を抑える。こういった摩擦力が締付力と比例関係にあることから、締付けボルトにsmartNejiを使用して締付力を精確に検出することで設計通りの摩擦力を発生し、床組み固定装置の効力を高める。

 加えて、将来に生じる締付力の変化も自動で検出し、日常点検の効率化が図られる他、地震発生時にはその前後のモニタリングデータから地震による橋の挙動と損傷度合いを即座に推定する。

「smartNeji」の性能検証試験 出典:IHIプレスリリース

 なお、今回のモニタリングシステムは,smartNejiの有用性を実橋で確認するために、西日本高速道路の協力を受け、IHI、IHIインフラシステム、NejiLawが共同で、関門橋の一部である床組み固定装置を対象に運用していく。

 今後は、smartNejiの性能を生かし、点検困難かつ振動を受けやすい部位や締付力の管理が重要になるボルト全般に適用範囲を広げ、国内外の長大吊橋における総合モニタリングシステムへと発展させていくことを目指す。

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