設計初期にZEB化検討、BIMとOpenStudioの“省エネシミュレーター”を東急建設が開発した狙いZEB(2/2 ページ)

» 2022年07月14日 11時17分 公開
[石原忍BUILT]
前のページへ 1|2       

解析プロセスの自動化で今まで以上の複数提案が可能に

 これまで、省エネ計算の手法では、面積や仕様といったバラバラの情報を集め、全てをExcelに転記しなければならなかった。必要な情報を収集した後は、建築研究所が提供している建築物のエネルギー消費性能計算プログラム「WEBPRO」で計算して確認していた。仮にその時点で目標数値に達していなければ、修正した設計案から必要な情報を再び探し、計算するというサイクルを何度も繰り返す手間が生じていた。そのため、2〜3の案を同時に作成するのが限界で、施主からの要望を聞き取って再提案するにも1〜2週間を要した。

従来のワークフロー 提供:東急建設

 しかし、TC-BES導入によって、提案作成から計算までの解析プロセスが自動化されることで、同時に数十案を提案可能になり、施主の要望を反映するまでの期間も迅速化され、顧客に対する付加価値の創出も見込める。特にエネルギーシミュレーションでは、面積を拾うのが一番時間がかかるため、BIMモデルからTC-BESへ一気に算出されれば、業務効率化にもつながる。

「TC-BES」導入後のワークフロー 提供:東急建設

 今後の展開では、竣工後の運用フェーズでも、TC-BESのデータを利活用することも視野に入れている。シミュレーション時の値と実数値を検証して、改修工事や別案件の設計にフィードバックして、設計の初期段階でありながら省エネ性能の精度を高める「設計→運用→改修/設計」といったエネルギーマネジメントのサイクル構築を目指す。

 東急建設 建築事業本部の担当者は、「当社はBIMをプラットフォームと捉え、積算の自動化、維持管理でのBIM活用、PCa部材製造の自動加工、構造・設備を統合した“BIMファーストモデル”の全建築作業所への投入などを順次進めており、建築事業のデジタルシフトを確実に実行していく。ZEB/ZEHに関しては、当初の目標年度だった2030年度を前倒しして、2025年度までにZEBとZEHで50%以上を達成したい」と展望を話す。

東急建設が描く、BIMをプラットフォームとした建築事業のデジタルシフト 提供:東急建設
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.