東急建設は、建設分野でのCO2削減対策の1つZEB普及に向けて、BIMを活用した設計の初期段階で、1次エネルギー消費量やコストを含めた複数の設計案を比較検討できる独自のシミュレーションツールを開発した。
東急建設は、建築物のライフサイクルを通じたエネルギーマネジメント(CO2削減)へのファーストステップとして、BIMを活用した新たなエネルギーシミュレーションツール「TC-BES(Tokyu Construction-Building Energy Simulator)」を開発し、2022年度から試験導入を開始した。
先立つこと東急建設では、2021年度に策定した長期経営計画“To zero, from zero.”のなかで、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の建設業としての3つの提供価値と、「デジタル人材の育成」「BIM/CIMによるデジタルプラットフォーム構築でデジタルシフトを加速」という競争優位の源泉の2つの軸で成長テーマを掲げている。今回のTC-BESは、このうち脱炭素とデジタルシフトに即した取り組みとの位置付けで、顧客のニーズをくみ取りつつ最適なZEB/ZEH提案を強力に支援するツールとなる。
また、別の要因では、2021年4月施行の「建築物省エネ法」で、延べ床面積300平方メートル以上の中規模非住宅建築物も省エネ基準の適合が義務化されたため、建設業でも今まで以上に、CO2削減対策でZEBの普及に取り組まなければならないことも背景にあった。
ただ、非住宅建築物のZEB化または住宅のZEH化のためには、設計の初期段階から、建築物のエネルギー消費量低減に関する検討を行う必要がある。そこで、東急建設は、施主との合意形成をプロジェクトの早期から円滑に図るべく、設計初期段階での1次エネルギー消費量を含む、各種エネルギー消費量低減のケーススタディーを複数案で比較して改善するシミュレーションツールとしてTC-BESを開発した。
エネルギーシミュレーションの手順は、RevitのBIMモデルから生成したエネルギーモデルを、エネルギー解析で一般的に用いるgbXML形式へ変換。TC-BES上でgbXMLファイルを読み取ると、面積などの基本情報はBIMモデルからそのまま自動入力され、屋根・外壁・窓ガラスといった建築仕様や空調・エレベーターなどの設備仕様は、東急建設が過去に携わったZEB案件のデータベースをもとにプルダウンで選択して、省エネ検討に必要なデータをインプットする。
その後は、米エネルギー省 再生可能エネルギー研究(NREL)が公開し、EnergyPlusをエンジンとするオープンソースのエネルギー解析アプリケーション「OpenStudio」がエネルギー消費性能を数分で自動計算。OpenStudioの演算で得られるデータは、1次エネルギー消費量の基準となるBEI値、イニシャルコスト、エネルギー消費量をもとにしたランニングコストやCO2排出量で、数値やプルダウンで設備仕様を変更して、最適な設計案にたどり着くまで評価/分析/比較することができる。
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