「PLATEAU」でも採択、CFDの耐風設計など幅広い建築シミュレーションを可能にするアルテアの製品群数値解析技術で広がる建築手法(2/3 ページ)

» 2022年04月26日 06時27分 公開
[川本鉄馬BUILT]

Revitとデータ連携する構造解析ソフト「S-FRAME」

■Inspire

 「Inspire(インスパイア)」は、モデリング、構造解析、最適化などに対応する。他ソフトの機能も盛り込み、Inspireのみでトポロジー最適化(位相最適化)も利用できる。

 トポロジー最適化は、自動車や航空機の設計であれば、強度を担保した上で、軽量化などの検証に用いる。建築でも、荷重や収まりの条件を満たしつつ、デザインの幅を広げる。

 さらに、3Dプリンタへの出力機能も備えているため、最適化した形状をそのまま実体化することも可能だ。

■SimSolid

 「SimSolid(シムソリッド)」は、高速の構造解析ソフト。メッシュ分割不要の構造解析が実現し、CADデータをそのまま読み込め、メッシュに関する専門知識も必要としない。

 特徴としては、処理が高速な点にある。処理時間はモデルの大小によるが、多くは数秒〜数分というオーダーで結果が得られる。利用には、追加のハードウェア投資も要らず、日常的に設計で使っている標準的なCAD端末(PC)で起動し、しかもレスポンスが早いのでストレスも生じない。

■S-FRAME

 「S-FRAME(エス フレーム)」は、建築・土木設計に特化してデザインされた構造解析ソフト。もともとは、2021年に買収したS-FRAME Softwareの製品で、アルテアの構造最適化ソリューションと組み合わせることで、設計者に対し、より快適かつ効率的な作業環境を提供する。

 また、S-FRAMEは、Autodesk Revitのネイティブファイルを変換せずに入力/出力。そのため、設計者はS-FRAMEとRevitを行き来しながら、シームレスに設計の検討や修正が行える。

 ちなみに、S-FRAMEが扱う領域は、これまでのアルテアには無かったものだ。S-FRAME SoftwareとのM&Aにより、S-FRAMEが有するBIMとの親和性を得たことになる。今後はこの親和性を、HyperWorksなどにも横展開させていくという。

「S-FRAME」自体も複数の建築系ソフトウェアで構成されている 提供:アルテアエンジニアリング
「S-FRAME」の「S-TIMBER」で可視化したオブジェクト(左)と解析結果の軸力表示(右)した多層ハイブリッドマスティンバービルのモデル 提供:アルテアエンジニアリング
「S-FRAME」で3D構造解析したムンバイ空港ターミナルのルーフ(over 600m long, modeled and analyzed in S-FRAME+S-STEEL) 提供:Skidmore Owings & Merrill

■Compose

 「Compose(コンポーズ)」は、データ分析、スクリプト作成、数学演算など向け。設計の現場で発生しがちな、データの反復計算やプロセスの自動化のためにスクリプトを作成するシーンで、Composeは線形代数の処理やマトリクス演算、統計処理をはじめ、多種多様な数学演算を実現する。スクリプト作成が手軽になることで、設計者の無駄な手数が自動化され、空いた作業時間を活用することで、全体の工程として質の高い設計が行える環境が整う。

 ほかにも、「FEKO(フェコ)」や「WinProp(ウィンプロップ)」といったWi-Fiも含めた高周電磁波や電波伝搬の解析ソフトも提供している。電波や電磁波の状態把握は、昨今は建設業界でも普及しつつあるドローンの保守点検や現場管理用のローカル5Gなどで重要性が増してきている。

 ちなみに、国土交通省が推進する日本全国の都市を3Dのオープンデータ化するプロジェクト「PLATEAU」では、2022年度の社会課題解決型ユースケース(Project PLATEAU)として、アルテアを事業者とする「気候変動影響シミュレーション」とともに、WinPropを用いた横浜みなとみらい21との「ローカル5G電波シミュレーションを活かした基地局配置計画」が採択されている。

2022年度の「Project PLATEAU」に採択されたユースケースリスト(社会課題解決型)。アルテアエンジニアリングは2件 提供:国土交通省

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