清水建設は、高レベルの音響品質が求められるホールや劇場を対象に、初期設計段階の3次元CADデータから建物の音響性能をリアルタイムに予測・評価する音響シミュレーションツールを開発した。今回のツールは、独自の音響解析プログラムを3次元CADツールと連携させたデジタルデザインツール。音響の専門知識がなくても簡単に使え、設計者は、専門家の知見に頼らず、プロジェクトの初期段階で、計画案の音環境に対し良否を迅速に調べられる。
清水建設は、高レベルの音響品質が求められるホールや劇場で、デザインの検討を合理化するために、初期設計段階の3次元CADデータから建物の音響性能をリアルタイムに予測・評価する音響シミュレーションツールを開発したことを2022年4月12日に発表した。
音楽ホールや劇場、講堂など、室内空間の音響性能が重視される施設では、音の響きや明瞭性を用途に応じて最適化するため、計画案の音響性能を都度シミュレーションしながら設計作業を進める。
一方、音響シミュレーションに利用する従前のツールは、音響の専門知識を持つ技術者が使用することを前提に開発されており、シミュレーション結果から施設の音響性能を的確に評価するには、専門の知見と相応の時間が求められた。
そこで、清水建設は、使用者の専門知識に依存せず使える音響性能の予測・評価ツールとして、今回の音響シミュレーションツールを開発した。
新たなツールでは、対象施設の3次元CADデータをインプットさせ、内装材の種類などを入力すると、音響解析プログラムによるシミュレーションが行われる。さらに、シミュレーション結果から、空間の用途に応じた基準値をもとに評価が行われ、受音点ごとの評価などが3次元モデル上に可視化。
一連の操作は、3次元CADソフトウェアとそのプラグインツールのみで完結する。利用方法に関して一例を挙げると、音の明瞭性評価が基準値に満たない場合には、空間の形状や内装材の種類・位置を変更するなどして基準値を満たすように設計者は調整できる。
調整後の再シミュレーションは、ほぼリアルタイムに行われるため,試行錯誤をしながら設計案の検討が可能で、最後に専門家が全体の総合評価を行い、音響性能の確認が完了となる。
また、これまでの音響シミュレーションツールでは、高度な専門知識や専門家と意匠設計者との間で詳細部分の調整も必須になるため、結論が出るまでに多くの時間を要していたが、新ツールでは、一人の設計者が一気通貫して音響性能の大部分を評価できる。
プロジェクトの初期段階からスピーディーに綿密な検討も行え、期待された性能を確保しながら建設コストや設計期間の縮減を達成する。リアルタイムに予測と評価するため、打ち合せの場における計画案の検討でも役立つ。
今後、清水建設は、オープンプランのオフィス空間などへの音響設計にも適用するように機能を拡張していく予定だ。
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