三井住友建設は、BIMデータをもとにタワークレーンのPCa部材の荷取場から設置位置まで自動誘導する運転支援システムと、部材の水平回転や保持を自動で制御する吊荷回転制御システムを東京多摩市の聖蹟桜ヶ丘プロジェクトの施工現場に適用した。
三井住友建設は2022年3月8日、IHIおよびIHI運搬機械と共同で開発した「タワークレーン運転支援システム」を実現場へ導入したと明らかにした。導入したのは、東京都多摩市で三井住友建設の設計・施工で総戸数520戸の33階建てマンション建設が進む「(仮称)聖蹟桜ヶ丘PJ A敷地新築工事」。
タワークレーン運転支援システムは、三井住友建設がクラウド上に構築したBIM施工データとプレキャスト(PCa)部材データ、作業工程データを一元管理する「施工情報システム」と、IHIとIUKのクレーン自動化技術を連携させ、タワークレーンオペレーターの運転操作を支援する。
また、施工情報システムと吊荷旋回制御装置「Roborigger(ロボリガー)」をリンクさせたRoborigger International PTYと共同開発した「吊荷回転制御システム」も適用することで、安全性と生産性がさらに向上する。
タワークレーン運転支援システムでは、あらかじめクラウド上の施工情報システムにBIMデータをもとにした施工計画情報(PCa部材情報、取付位置や順序など)を登録。PCa部材に貼り付けたRFIDタグを現場搬入時に読み取り、部材の固有番号の自動照合を行う。測位技術のGNSSを活用し、PCa部材を現場に搬入する際の位置と向きの情報を取得して、それぞれのシステムと連動させる仕組み。
タワークレーン運転支援システムは、搬入されたPCa部材の最適な揚重経路を施工計画情報に基づいて自動生成。オペレーターがモニターで確認後、PCa部材の荷取場から設置位置上空までを自動で誘導する。タワークレーンの操作は、経験豊富なオペレーターが必要とされているが、新しい運転支援システムによって、安全を確保しながら適正に自動誘導が可能になり、今後懸念される担い手不足の課題解消につながる。
一方、吊荷回転制御システムは、タワークレーンの揚重作業と連動し、PCa部材の水平回転や保持を自動制御。設置位置上空の到着までに施工計画情報に基づき、PCa部材の方位角へ自動で回転または保持し、スムーズな降下設置が実現する。今まで作業員が人力で介錯ロープを介して吊荷を回転させていた作業が不要となり、吊荷の衝突や作業員の転落などによる災害リスクが軽減する。
今後の展開では、三井住友建設が掲げる「中期経営計画2019-2021」で、「建設生産プロセスの変革」を基本方針の1つに掲げ、2030年の実現に向け、設計・施工計画と建設現場をデジタルデータでつなげたデータ連携システムの構築を目指している。今回、導入したシステムは、建設現場のデジタル化を支援する次世代建設生産システム(SMile生産システム)の一部となる見通し。
将来は、デジタルデータを蓄積し、計画データと連携しながら、施工シミュレーションや自動化を図ることで、さらなる安全性と生産性の向上にフィードバックしていくとしている。
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