大成建設が改修した「音響のラボ」の運用を開始、建築部材の遮音性能を計測可能にリノベ

大成建設は、神奈川県横浜市戸塚区で保有する「技術センター」の音響実験棟「音響のラボ」を改修した。今後は、集合住宅やホテル、オフィス、工場、劇場、コンサートホールなど、遮音と音の響きが重要となる建物に使用される高遮音建材や吸音材の開発に活用する。加えて、外装材や建具の斜め入射遮音性能の評価といった建築構造物のあらゆる「音」に関わる検討に、「音響のラボ」を中心に、同社が保有する「風音のラボ」と「音と電磁のラボ」の実験棟を活用していく。

» 2022年03月18日 07時00分 公開
[BUILT]

 大成建設は、神奈川県横浜市戸塚区で保有する「技術センター」の音響実験棟「音響のラボ」を改修し、2022年1月に運用を開始したことを同年3月8日に発表した。

「斜め入射」に対応する遮音実験室を設置

 リニューアルした音響のラボは、「JIS・ISO規格」に準拠した2つの遮音実験室、試験体周囲を半球状に移動する業界初のスピーカー移動装置や試験体に入射する音の強さを自動計測するマイクロフォンアレー装置を備え「斜め入射」に対応する遮音実験室で構成され、多様な音の入射条件で建築部材の遮音性能を評価できる。

 上記の実験室を運用することで、同社が既に保有する「風音のラボ」と「音と電磁のラボ」と併せて、建物に関わるあらゆる音の問題に対応する環境を整えた。

 具体的には、建物の設計では、室内の静穏性を確保するために、各部材の遮音性能※1を評価することが重要となるが、新設した3種類の実験室では、音の入射条件(方向)や対象とする部材によって使い分けられる他、音源室から発生させた音に対して、壁材や床材などの建築部材を透過して受音室に入る音のレベルを測定し、部材の遮音性能を算出する。

※1 遮音性能:空気中を伝わってくる音を建築部材が遮断する性能。

音響のラボの外観(左)と内観(右) 出典:大成建設プレスリリース
JIS規格、ISO規格および斜め入射に対応した遮音実験室の概要 出典:大成建設プレスリリース

 JIS・ISO遮音実験室では、集合住宅やホテル、オフィスなどに使用される界壁などの建築部材に対して、さまざまな方向から音が同時に入射する場合の遮音実験だけでなく、建築内装材の吸音率測定や木造床の床衝撃音実験、配管系の設備固体音実験も可能。

音源室のJIS遮音実験室(左)とISO遮音実験室(右) 出典:大成建設プレスリリース

 斜め入射遮音実験室では、無響室※3を音源室とし、多様な入射角度の斜め入射遮音実験を効率的に行うために、リモートコントロールで半球状に移動する業界初のスピーカーや上下・左右に動くMEMSマイクロフォンアレー※4を取り付けた。

※3 無響室:全ての床・壁・天井が高性能の吸音材料で仕上げられている反射音がほとんどない実験室。

※4 MEMSマイクロフォンアレー:主に携帯電話などで使用されている超小型のマイクロフォンを複数台配置し、音源の方向を考慮した測定が可能なシステム。

 また、地上の鉄道軌道に隣接する高層建物高層階の外装材※5に入射する鉄道からの騒音は、多様な方向から音が同時に入射するケースとは異なり、一方向からの斜め入射となり、従来のJIS・ISO規格に準拠した遮音実験室で得られる遮音性能値とは異なる値を示すため、同様の入射条件により建築部材の遮音性能を評価する必要があるが、こういった評価を斜め入射遮音実験室は行える。

※5 外装材::建物の外側に設置される材料の総称であり、ここでは、主にカーテンウォールやサッシのガラス、外装パネルの鋼板、ALCや押出成形セメント板などが対象となる。

高層建物への斜め入射の例(左)と音源室の斜め入射遮音実験室(右) 出典:大成建設プレスリリース

 なお、建物の設計と施工にあたっては、全工程でBIMを採用し、壁にはプレキャスト間仕切り壁材「T-eConcrete/Carbom-Recycle」を用い、各実験室の床材に「T-eConcrete/建築基準法対応型」を活用して、無響室には防振遮音構造フレームにCFRP構造材を適用し、建築生産プロセスを合理化させ、環境にも最大限配慮した。

「音響のラボ」の改修で導入した技術 出典:大成建設プレスリリース

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