安藤ハザマは、AI・データ解析を用い、企画段階のボリューム設計を自動化し、敷地入力から概算コスト算定までの検討時間を5分の1に短縮することを目指している。
安藤ハザマは、AI・データ解析を用いて、基本計画前段階の業務である企画段階のボリューム設計を自動化する構想をまとめ、現在システムを開発中だと2022年1月24日に発表した。
開発中のシステムは、設計者が計画敷地と建物の基本情報を入力後、簡単な追加条件を入力することで、ボリュームプランと概算コストがセットで企画ボリューム案として提示される。具体的には、1.ボリューム形成プロセス、2.プラン形成プロセス、3.コスト算定プロセスの3つのプロセスから成り、設計者の提案プラン作成や複数案の絞り込みをアシストする。
建築設計の最初期にあたる企画段階のボリューム設計は、技術者の手作業で行われており、成果品提出までの期間や成果品の品質が、知識・経験に基づく個人の力量に左右されていることが多い。
そこで安藤ハザマでは、企画段階のボリューム設計業務を自動化するプログラムを構築することで、これまで経験の浅い設計者が4〜5日ほど要していたボリュームプラン作成を概算コストを含めて1日で自動作成できるようになることを目指している。業務時間が5分の1に短縮されれば、設計者はより創造的な設計を思考する時間を確保できるようになる。
3つのプロセスのうち、ボリューム形成プロセスは、Webサイト上に公開されている法令情報をもとに、該当敷地に関する都市計画情報を補足し、通称「鳥かご図」の生成といわれる建築規制範囲を表示。さらに設計者が建築形態のタイプ別を選択すると、建築可能な最大のボリュームが自動生成される。
次のプラン形成プロセスでは、過去物件のデータベースから、計画の参考になる類似物件を複数表示。設計者がそのなかで1つを選択すると、類似案件の規則に従った配置・ゾーニングを自動生成する。
コスト算定プロセスでは、企画ボリューム案の情報をベースに、躯体、仕上、設備における過去物件の歩掛りデータを活用し、統計的手法を用いて概算コストを算定する。
ボリューム形成プロセスとプラン形成プロセスで生成された企画ボリューム案は、BIMデータへ変換され、基本計画の提案資料作成、次の業務プロセス(基本設計)へとプロジェクトを横断して活用することができる。また、生成された計画案は、データベースへ格納され、次回以降に検討する際の学習データとして再活用されるという。
ボリューム形成・プラン生成プロセスについては、武蔵野大学データサイエンス学部 武藤佳恭教授(慶應義塾大学名誉教授)、野原ホールディングス、GH Advancersと共同で開発を進めている。
これまでの開発で、ボリューム形成プロセスとプラン形成プロセスを経て企画ボリューム案を提示する部分は、限定条件下と限定用途でて開発済み。今後、適用条件を拡張させて、妥当性の検証を行い、2022年度中に実物件への導入を目標としている。
コスト算定プロセスは現在開発中で、一部の用途で統計的手法によるコスト算定を試行している。さらに、将来は基本設計段階で、上部躯体の部材断面を自動で算定し、数量積算できるようになることを見据えており、今後、一体のシステムとして利用できるように整備を進めていくとしている。
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