日建設計とジオクリエイツは、リモート下での避難訓練に対応するVRを開発した。日建設計では、2020年と2021年に、東京都千代田区飯田橋の東京本社ビルで行った50〜100人規模の避難訓練で今回のVRを実運用している。
日建設計とジオクリエイツは、リモート下での避難訓練を中心に、さまざまな案内や誘導・検証で役立つVRツールを共同開発し、実際のオフィスで実証実験を開始したことを2021年12月3日に発表した。
今回のVRツールは、コロナ禍に建物の避難訓練をリモートで実施するために開発されたもので、VRの作成に日建設計製の設計用入力地震動「NS Wave(エヌエスウェーブ)」と両社が開発した仮想地震心理評価システム「SYNCVR(シンクブイアール)」を活用し、VR避難訓練の分析にジオクリエイツ製のVR用SaaS「ToPolog(トポログ)」を用いている。
NS Waveは、高層建物や免震建物の設計時に、地震時に生じる建物の揺れを検証するための「設計用入力地震動」を扱えるもので、対象の敷地を想定して多様なパターンの地震をシミュレーションし、設計や維持管理用のBIMデータを用いることでVRも作れる。
ToPologは、VRとARのソフトやデバイスを限定せず、デジタルツインやメタバースにも関連付けて、空間体験データをクラウドに保存するSaaS型ツールで、設計検討や現地調査のVRを体験するユーザーの視線や脳波から空間の体験価値を定量化する。
SYNCVRは、VRを利用して地震時における建物の揺れをリアルにシミュレーションするもので、建物の耐震性能について体感するのに貢献し、計画地の地盤条件や建物の高さ、平面計画、構造、階数などに応じたVR映像を容易に作成できる。
上記のシステムを用いて、両社が開発したVRの特徴は、避難訓練を多人数同時参加で行える他、VRゴーグルなどを使用せず、PCやスマートフォンを用いて手軽に使える点。
加えて、ユーザー参加による避難訓練を実施と記録可能なVRツールのため、建物の避難動線をクライアント、設計者、ユーザーで共有することにも対応している。ユーザーはVR内で、現実のように多人数が参加する臨場感や時間、速度を反映させた避難訓練を体験し、避難時の人流や視線といった探索行動を解析することも容易だ。
具体的には、参加する各ユーザーのアバターがそれぞれの席に表示されて、そこから避難を開始することで、臨場感のある避難訓練を行え、現実環境で迅速な実施が難しい多様な時間帯や災害の訓練を短時間で複数人で体験可能。
さらに、周辺の人密度を考慮して、各ユーザーの避難移動速度や時間を変更することで、より現実に近い避難訓練を再現し、各ユーザーがどのような経路で何を見て避難したか、記録を残し、建物のサインや避難動線の計画にも使える。
こういった視線・人流分析技術を応用することで、避難経路のサインと誘導灯の配置検討、通学路と工場の注意喚起や研修の改善、商業施設のサイン広告、誘導オペレーション、装置の検討など、多様な場面で活用できる。
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