建築分野での活用に注目が集まっているVR。「VRは設計事務所にとって非常に有効なツール」と語るのが、デザイン住宅設計を手掛けるフリーダムアーキテクツデザインだ。2016年から設計業務や顧客提案にVRを活用し始めた同社に、VRを利用するメリットや成果について聞いた。
建築分野での活用に注目が集まっているVR(バーチャルリアリティ)。ソフトウェアの進化や、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の低価格化が進んだことで、実際の現場への導入事例も増えてきた。
フリーダムアーキテクツデザイン(東京都中央区)もVRを活用し始めた1社だ。デザイン住宅設計を手掛ける同社は、2016年から設計業務や顧客提案に、VRの活用を模索し始めた。2017年2月からは一部の顧客向けに、設計段階から設計している空間をリアルにVRで体感できる「VRアーキテクツシステム」というサービスをリリースした。開始から数カ月でサービスの提供拠点を5カ所に増やすなど、「VRは設計事務所にとって非常に有効なツール」という手応えを感じ始めているという。
同社ではVRの導入によって、具体的にどのようなメリットや変化があったのか。「顧客へのメリット」「設計の変化」「今後の展望」という3つの観点で取材を行った。第1回の本稿では「顧客へのメリット」について紹介する。
フリーダムアーキテクツデザインがVRの活用を模索し始めた背景には、BIMの導入がある。同社は2016年10月にBIM設計室を設置。現在はAutodeskの「Revit」を利用し、一部の案件からBIMによる設計を進めている。設計したデータを「Autodesk Live」に持っていき、顧客との打合せの際、設計した住宅モデルをVRで“体験”してもらっているという。
VRを業務に取り入れようと思ったきっかけについて、BIM設計室 室長を務める長澤信氏は「かつてのVRというのは、ハードウェアの価格も高く、モデル精度の面でもあまり魅力的とはいえなかった。ただ、最近のシステムでは空間のスケール感なども高精度に再現できるようになっており、2016年に実際に体験したときに『これは使えるかも』と感じた。また、従来はデータの加工に手間がかかり、設計者の負担も大きかったが、ツール側の進化によってそういった負荷も少なくなってきた」と述べる。
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