AWSを基幹とする建設デジタルプラットフォームの優位性としては、ビッグデータを保管するデータレイク、センシング・制御(IoT)、可視化(BI)、分析・予測(AI)が基本実装されており、組み合わせによって建設業務で必要なアプリケーションを効率良く構築できることがある。
また、クラウドサービス提供者側が管理するAWSのManaged Servicesを中心としているため、データ量の増加や機能追加にも、コストを抑えて柔軟に対応。膨大なデータの保管場所となる“データレイク”そのものも、AWSのオンラインストレージのAWS S3を採用し、大規模データの分析に適したデータフォーマットを基本とすることで大量のデータを安価に処理。AIや分析機能は、機械学習モデルを高速に開発する「Amazon SageMaker」で、同じ基盤上にあるデータレイクのデータを用い、AIモデルの実験から、試行、本番モデルの作成までをトータルで行える利点がある。
竹中工務店が既にデータを組み合わせてAIモデルを作成した一例が、着工から竣工までに、月々必要な施工管理者の人数をはじき出す「人員山積みの予測」。工事情報や勤怠管理といったこれまで個別に運用していた職能システムにある予想工事や手持ち工事、工数実績のデータをデータレイクに統合させ、フルマネージドサービスのAmazon SageMakerで人員予測モデルを作成。受注予定工事の入替え、期ずれ、価格変動にも連動しながら、新しい工事を受注した際、瞬時に必要な人員をシミュレートできるという。
また、建設機械を対象に、稼働情報をリアルタイムに遠隔監視するシステムも現場に適用しているという。工事用エレベーターやタワークレーンなどにIoT制御機器を設置し、インターネット接続でAWSのクラウドサービスを介して、PCやiPadでタイムリーに故障検知や故障予測も含めた稼働状況を把握することで、建機稼働の最適化や現場の安全確保に役立てている。
建設デジタルプラットフォームでは、さらにスマートシティーを見据え、IoTデバイスや他サービスとの接続やデータモデリングに、都市OSの共通基盤「FIWARE」を導入したほか、ストリームデータをリアルタイム処理する「Amazon Kinesis」を通して、データレイクやAI分析にまでスムーズにつなげることも試みている。
Amazon Kinesisは、施工領域では、建設工事の工程進捗データ、環境情報(CO2、温度、湿度など)、作業員情報などをBIMモデルと連携することで、サイバー空間上でも建設現場を管理することが可能となり、ARヘッドセットでリアルの建設現場に、仮想の施工計画を重ね合わせ、関係者による現場確認や人員数の調整を行う施工デジタルツインも構想している。
その先には、ロボット工学アプリケーションの「AWS RoboMaker」で独自に開発した建設ロボットを一括で遠隔操作する「建設ロボットプラットフォーム」と、建設デジタルプラットフォームを結ぶことで、建設現場に自律走行ロボットを実装することも視野に入れている。
今後、クラウド化のロードマップでは、現在を“クラウドシフト期”とし、200以上に及ぶ自前のシステムをAWS S3に順次移。2025年には業務システム全てがクラウド上で運用され、そのメリットを享受できる“クラウドネイティブ”期を将来ビジョンとして描いている。
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