大成建設が「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発に着手産業動向

大成建設は、地熱技術開発と共同で、地熱によって高温状態となった地層中にCO2を圧入し、熱媒体として循環させることで地熱資源を採熱する「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発に着手する。

» 2021年10月05日 09時00分 公開
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 大成建設は、地熱技術開発と共同で、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した地熱発電技術研究開発事業※1「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」に応募し、2021年7月に採択されたことを2021年8月23日に公表した。両社によるカーボンリサイクルCO2地熱発電技術の開発期間は2021〜2025年度の5年間を予定している。

※1 地熱発電技術研究開発事業:現在の熱水資源を用いた地熱発電に加えて熱水資源に頼らない地熱発電技術開発の委託研究を公募する事業

国内の地熱資源量は2347万kw

 環太平洋造山帯に位置する日本は、世界でも有数の地熱資源国であり、地熱資源量は2347万キロワット(kw)を誇り世界第3位に位置する。その膨大な地熱資源を活用した地熱発電は、地中で暖められた「熱水(蒸気を含む)」を汲(く)み上げて、タービンを回転させることで発電する再生可能エネルギーで、昼夜を問わず安定的に発電可能なベースロード電源とされている。

 しかし、地熱発電に必要な調査から事業化するまでに相当な時間を要し、さらにボーリング調査により地層中が十分に高温であることが確認されても、熱水量不足により発電には適さず、事業化に至らないなどの課題があり、国内の総発電電力量に対する地熱発電電力量の割合は0.3%にとどまっている。そのため、今後、地熱資源の有効活用による地熱発電事業を加速するためには、熱水に代わる新たな地熱発電技術の開発が求められている。

 そこで、大成建設と地熱技術開発は、地熱によって高温状態となった地層中にCO2を圧入し、熱媒体として循環させることで地熱資源を採熱する技術の開発に今回の事業で着手した。

CO2地熱発電の概念図 出典:大成建設プレスリリース

 具体的には、高温状態にあるが熱水量が不足するため従来技術では地熱発電に適用できなかった地熱貯留層中に、CO2を圧入し、高温になったCO2を回収することで地熱発電を可能にする。既往の研究によれば、高温高圧下でのCO2の物性は高効率に地熱資源を採熱する上で有利であると考えられている。圧入されたCO2の一部は、地熱貯留層中に炭酸塩鉱物などとして固定されるため、カーボンニュートラルへの貢献も期待される。

CO2地熱発電技術の開発における大成建設と地熱技術開発の役割

 大成建設は、火力発電所などの排ガスから二酸化炭素を分離・回収し、地層中に圧入・貯留する「二酸化炭素回収・貯留(Carbon Capture and Storage、CCS)」で、地盤に圧入した後のCO2に関する挙動(流れや化学反応など)を数値解析する技術を開発し、長年にわたり国内外でCCSの研究開発や実証事業に活用してきた。この経験を生かし、今回の事業では上記の解析技術を用いて、地熱貯留層内でのCO2流体挙動把握技術の開発を主に担当する。

 地熱技術開発は、地熱発電技術で、水を人工的に地下に注入・循環することで地熱流体の生産を維持・増産する技術(Enhanced Geothermal System、EGS)に関する開発を長年実施してきた。また、「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」に関して、CO2の挙動を連続観測する坑井内圧力温度観測装置を国内のCCS実証実験場に提供するとともに、CO2を地熱貯留層に注入する場合における岩石と水との間で生じる反応挙動の数値モデル解析を行っていた。今回の事業ではこれらの技術を用いて、全体システムの設計と地熱貯留層内でのCO2人工貯留層造成技術の開発を主に担う。

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