大和ハウス工業は福島支社をネット・ゼロ・エネルギー・ビルの仕様で建設して、5月25日に業務を開始した。地上5階建ての屋上に太陽光パネルを設置したほか、地中熱を利用した空調や自然通風を取り入れた自動開閉窓など、最先端のエネルギー技術を駆使してCO2排出量を53%削減する。
自然エネルギーと最新の省エネ技術を組み合わせてエネルギーの実質的な消費量をゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー」の取り組みが急速に広がっている。工場やオフィスビルをネット・ゼロ・エネルギーに転換するプロジェクトを推進中の大和ハウス工業は福島県の福島支社を完成させて、5月25日から日常業務を開始した(図1)。
新しいビルでは地中熱による空調システムを導入したフロアや、自動開閉窓を装備して空調の使用量を削減するフロアなど、各種の省エネ技術を導入してフロア別の電力消費量の削減効果を比較検証する。照明は全館でLEDを採用する一方、屋上に発電能力が39kW(キロワット)の太陽光発電システムを設置して創エネ効果も生かす。
省エネと創エネの組み合わせにより、省エネ法で決められているCO2排出量の基準値から53%削減できる見込みだ(図2)。電力の消費量が最も多い空調・換気でCO2排出量が4割減るほか、照明は4分の1程度の排出量になる。大和ハウス工業は電力消費量を公表していないが、実質的な消費量がゼロになるネット・ゼロ・エネルギー・ビルの実現を目指す。
地中熱を利用した空調システムはビルの下に埋め込んだ採熱管から自然の熱を取り込む方式だ。年間に約17度で安定している地中熱の特性を生かして、夏に放熱して冬に吸熱しながら冷暖房の効率を高めることができる(図3)。この地中熱による空調システムは1階の執務フロアで利用する。
一方で4階には自動開閉機能のある「パッシブエアフローウィンドウ」を採用した。窓の上部に設けた開口部とスクリーンを組み合わせて、春や秋には自然通風で、夏には熱気を天井部から排気して空調の負荷を抑える仕組みだ(図4)。屋外に雨水・風速センサーと換気塔を設置して通風量を制御できるようにした。
ビル全体のエネルギー使用量はBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を使ってフロア別に把握する。防災対策として蓄電容量が15kWh(キロワット時)のリチウムイオン蓄電池も導入した。夜間の安い電力を充電して昼間に利用するほか、停電時には昼間に太陽光パネルで発電した電力を充電して夜間に利用することも可能になった。
福島支社に勤務する営業部門の約220人が新ビルに入居して、実際に業務で使いながら1年間かけて省エネ効果を検証する予定だ。検証結果は企業向けに販売するネット・ゼロ・エネルギー・ビルの提案に生かす。
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