連載第8回は、ドローンを土木分野で適用することの利点と、無人飛行であることの有用性をより引き出せる「自律飛行技術」について解説します。
無人航空機(UAV)のドローンを活用することで、手軽に上空から広範囲のあらゆる情報を取得することができます。加えて、高所やアクセスすることが困難な箇所の撮影も可能になるなど、ドローンには測り知れないメリットがあり、社会インフラのいろいろな場面で、その可能性には期待が寄せられています。とりわけ測量や空撮などでは、いまやドローン利用は一般化しています。
仮に、上空から災害直後に広域の被害状況を迅速に把握することができれば、救助や応急対応のみならず、復旧に向けた各種対策を効率的に行えるようになります。衛星画像や航空写真は、真上から見たような形に補正(オルソ化)して用いることで、正確な位置や形状が一目で分かり、地図と重ねて比較または検証することもできます。オルソ画像を用いた被災状況の検出はこれまでにも行われていましたが、深層学習を適用することで、ドローンから撮影された斜め航空写真をそのまま利用して、被害の有無の差分を検出できるようになってきています※1。
下図では、建物を検出し、被害を分類する学習モデルによって、無被害の建物を青枠で、損傷を受けた建物を緑枠でそれぞれ判別しています。深層学習による自動検出と、広い範囲を迅速に撮影できるドローンの特長を組み合わせることで、応用の可能性はさらに大きく広がります。
他にも、通常人の手が届きにくいところの撮影が容易にできることも、ドローンの特長の1つ。豊田工業高等専門学校の発表した論文「ドローン撮影を用いたディープラーニングによる橋梁部材損傷度の評価」※2では、橋梁(きょうりょう)点検の際に、人が立ち入れない箇所に対して、ドローンで撮影し、損傷度を深層学習で判定しています。
下図では、切り立った河川護岸でアクセスしにくい橋梁の支点部分をドローンで点検しています。このように、人間の作業をスポット的にドローンで補助することで、現場の状況に応じた効率的かつ効果的な点検が実現するはずです。
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