日立製作所と応用地質は、地下構造物を可視化する「地中可視化サービス」の機能強化を図った。地中可視化サービスは、地中レーダー探査装置を搭載した車を走行させ、路面下の画像をAIで解析し、2次元や3次元でデータ化する。今回は、これまでに実証を重ねてきた全国18事業体の実績をもとにしたAI精度の向上に加え、サービス自体をSaaS型プラットフォームとしたことで、必要な時にWeb上からいつでも確認できるようにした。
日立製作所(以下、日立)と3次元地中探査技術を強みとし地質調査を専門とする応用地質は、上下水道、ガス、電気、通信などのインフラ事業者や施工・設計業者向けに展開する「地中可視化サービス」を強化し、クラウドを活用した新たなオンデマンドサービスとして、2021年12月8日より提供を開始した。
掘削を伴う埋設管の敷設工事は、事前の安全対策のため、施工予定地での既設埋設物の情報収集が欠かせない。しかし、通常は、複数の事業者により個別に管理され、情報収集に多大な時間を要し、配管の位置が図面と異なるケースもあるため、重大な損傷事故や工期遅延につながるといった課題があった。
そこで日立と応用地質は、2019年9月に地下埋設物情報提供サービスの協業に向けた覚書を締結し、複数インフラ事業者による地下埋設物の情報を統合的に提供するプラットフォームの開発に向け、共同で開発を進めてきた。これまでに実証を重ねている地中可視化サービスは、応用地質が地中レーダー探査装置を搭載した車を走行させ、路面下の画像を取得し、日立のAI解析技術で埋設管の位置座標を2次元/3次元で高精度にデータ化するなど、両社の技術・ノウハウを用いている。サービスとしては、地中のガス管や水道管といった埋設物に関する位置や寸法などを高精度に可視化して一元管理し、地下掘削工事などで必要となる埋設物情報を提供する。
今回の強化では、自治体や鉄鋼業など全国18事業体の協力のもと、合計240キロにのぼる地下レーダー探査を通じた継続的な評価検証と改良を行い、解析技術のさらなる精度向上を実現したほか、クラウドサービス(SaaS)化して利用を容易にすることで、必要な時に必要な場所の埋設物情報をオンデマンドで提供可能とした。広範な管路新設や更新時の計画・設計・施工の効率化、埋設管の損傷事故や工期遅延の発生リスクの低減など、社会インフラの維持管理業務の高度化が期待される。
地中可視化サービスでは、レーダー探査で取得した画像から、AI解析技術で、埋設管・地中構造物・地層境界などの情報を判別している。レーダーの反応強度は土質の状態により異なるため、全国のさまざまな場所や条件下での検証を重ね、継続的な精度向上を図った。
最新の評価検証では、実際に地中埋設工事を行い、埋設物の位置情報が正確に記載された図面上の埋設管の位置と、AIによる解析結果を重ね合わせ、水平精度を比較したところ、対象箇所全てで実際の埋設管との位置が一致するなど、高い解析精度を確認した。また、図面上のガス管の深度と、AIによる解析結果の比較検証では、相対位置10センチ以内に抑え、位置精度の高さも確かめられた。
また、SaaS型プラットフォームとなったことで、必要なタイミングで参照したい範囲の埋設物情報を確認できるようになった。埋設物情報は、Webブラウザ上で2次元/3次元の地下埋設物が表示され、埋設管の深度や地上構造物からの相対距離、埋設管同士の距離など、敷設状況が分かる。また、既に埋設物情報がSaaS型プラットフォーム上に整備されている場所は、参照権を購入することで埋設管情報をすぐに閲覧することもできる。
今後の展開では、工事計画や既存の埋設物情報をWebブラウザ上で一元的に管理・共有することで、事業者間の個別調整や工事立ち合いなどの工数軽減、事業者間のコミュニケーションの円滑化など、利便性・生産性向上につなげる。また、地下埋設物情報を建設機械と連携することで、一定深度に機械のポイント(爪)が到達した際にアラームを出すマシンガイダンスによる事故の未然防止や掘削の自動化、埋設管敷設ルート候補の自動レコメンドなどへの応用も検討していく。
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