東京海上日動火災保険と応用地質は、IoTセンサーで取得したデータと3D都市モデルを活用し、台風や集中豪雨などによる浸水被害を見える化する防災サービスの開発をスタートした。今後は、高度な流体解析技術やリアリティーのある可視化技術を取り入れて、データ活用の高度化を目指す。さらに、自治体から地域住民への効果的な防災情報の伝達や企業からステークホルダーに対する災害リスク説明を効率化するリスクコミュニケーションツールの開発を進める。
東京海上日動火災保険と応用地質は、IoTセンサーで取得したデータと3D都市モデルを活用し、台風や集中豪雨などによる浸水被害を見える化する防災サービスの開発に着手したことを2021年11月5日に発表した。
両社は、2021年6月21日に戦略パートナーとしての提携を開始し、スーパーシティーとスマートシティーを想定した防災サービスの開発を検討してきた。検討を重ねた後、第1弾として、人工衛星のデータや浸水深さの解析に基づく「浸水エリア予測」と、冠水を検知するIoTセンサーによる「実測データ」を組み合わせた「リアルタイム浸水情報」をベースに、アラートを発信して企業や自治体に防災と減災行動を促すサービスの開発をスタートした。
国土交通省が整備を進める3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」などを活用し、IoTセンサーと災害状況の可視化技術を融合したサービスの開発も推進している。
新サービスの開発に当たり、両社は、2021年7月から、過去の浸水履歴やハザードマップの情報をベースに、福岡県久留米市内の水災リスクを分析し、リスクの高いエリアにある保険代理店に応用地質製の冠水センサー「冠すいっち」を設置した。その後、企業や自治体、住民の災害対応で、冠すいっちの有効性を検証してきた。
2021年8月に発生した豪雨で、久留米市で8月の観測史上最大となる1時間に72.0ミリの雨が観測された際には、冠すいっちの配置場所で、同日の3時29分に4センチ以上の冠水をセンシングした。4時41分には45センチ以上に上昇して、7時27分に冠水が4センチ未満になったことを感知。
こういった検証の結果、冠すいっちで取得したデータが実際の浸水状況や浸水深さと整合しているだけでなく、事前に登録した関係者にアラート情報がリアルタイムで配信されたことを確かめた。さらに、東京海上日動で既に活用している人工衛星のデータによる浸水エリアの特定や浸水深さ解析の精度向上にもつながることを確認した。
また、防災IoTセンサーで収集したデータや気象データ、ハザードデータなどと、3D都市モデルのPLATEAUを組み合わせて、3D都市空間と浸水被害シミュレーションサービスの開発を進める。具体的には、従来は、これらのデータを2次元の地図上で表現することが一般的だったが、3D都市空間・浸水被害シミュレーションサービスは、3次元で見える化された都市空間上でシミュレーションを行うため、周辺の状況把握が容易になる。
上記のツールを活用し、地域特性に応じた「自然災害対応力向上支援(自治体向けサービス)」や拠点のリスクを可視化することで、企業向けに事前防災対策と意思決定支援のソリューションを開発していく。
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